リテーナー(保定装置)は、矯正治療後の歯の後戻りを防ぐためのとても重要な装置です。しかし装着していると、「普段よりしゃべりにくい」といった悩みを持つ方も多いようです。多くの場合は1~3週間ほどで慣れ、いつも通りの発音ができるようになります。気になるしゃべりにくくなる原因は、リテーナーの人の発声や発音、嚥下に大きな役割を果たしている口腔の天井部分を覆う構造にあります。本記事では、装着期間やしゃべりにくさを軽減する方法について、詳しく解説します。
この記事でわかること
1. 矯正治療後リテーナーを装着するとしゃべりにくい理由
1-1. 保定とは
歯列矯正治療は、長い期間をかけて歯並びを矯正します。その方法は、ワイヤーやマウスピースを装着し、圧力をかけて歯を動かします。保定期間とは、歯が動いてキレイになった場所に定着するまで、固定する期間のことです。例えば保定をしっかりしないと、歯は元に位置に戻ろうとしてしまいます。ガタガタが強くて抜歯した場合、保定をしっかりしないと再度ガタガタになってしまうのです。
このように、歯列矯正治療において、保定はとても重要で欠かせないものです。
1-2. リテーナー(保定装置)とは
リテーナー(保定装置)は、矯正治療後の歯の後戻りを防止する装置です。取り外しできない「固定式」と取り外しできる「可撤式」の2種類があります。装着期間の目安は、2~3年です。
1-3. リテーナーを装着するとしゃべりにくい理由
矯正治療が終了し装着するリテーナーは、薄くて強い素材で作られています。ただ多くのリテーナーの構造は、口蓋部を覆った形になっています。口蓋とは口腔の天井部分のことであり、人の発声や発音、嚥下に大きな役割を果たしています。
この口蓋部が覆われることで、舌との接触感や、空気の通り方が変わることがあります。その結果、今まで通り発音がしにくく、しゃべりにくくなることがあります。
2. リテーナーを装着しているときにしゃべりにくく感じる期間はどれくらい?
一般的に、リテーナーに舌が当たるのに慣れていない場合、しゃべりにくく感じます。その期間には個人差はありますが、1~3週間ほどで慣れる人が多い傾向があります。
時間の経過とともに舌が慣れてくるので、いつも通りの発音ができるようになります。ただし、人前で話す職業や機会がある方は、歯科医師にリテーナーの種類や装着する時間などを相談してみましょう。
3. リテーナーの種類とそれぞれのしゃべりにくさの違い
リテーナーには、大きく分けて以下の3種類があります。またリテーナーの種類によって、しゃべりにくさは異なります。ここでは、種類ごとのしゃべりにくさについて解説します。
3-1. プレートタイプ
プレートタイプのリテーナーは、プラスチック部分が上顎を覆う構造になっています。そのため、舌が触れる感じや空気の通り方が変わり、しゃべりにくさを感じやすい傾向があります。またこのタイプは、歯の表側に細いワイヤーが付いています。そのため歯を固定しているワイヤーに唇が触れ、しゃべりにくさを感じることがあります。
3-2. マウスピースタイプ
マウスピースタイプは、最初はしゃべりにくさを感じることがあります。ただこのタイプは上顎は覆われていないので、プレートタイプと比べると早く慣れる傾向があります。またしゃべりにくいパターンの一つに、マウスピースに唾液がたまることがあります。この背景には、マウスピースを装着することで唾液が口の中を循環することができなくなるという点があります。その結果、口角に唾液がたまってしまいます。マウスピースタイプは自分で取り外すことができますが、しゃべりにくさを感じて外すと、保定効果に影響するので注意しましょう。
3-3. フィックスタイプ
フィックスタイプは、固定式のリテーナーです。具体的には、歯の裏側の形に合わせて、太さ0.5㎜ほどのワイヤーを屈曲させて接着させます。このタイプは、ワイヤーや接着剤の厚みが他の保定装置よりも薄いという特徴があります。そのため、滑舌や発音への影響が比較的少なく済みます。
4. リテーナー装着時のしゃべりにくさを軽減する方法
タイプによって差はあるものの、リテーナーの装着時はしゃべりにくさがあります。特に裏側矯正(ワイヤー矯正)の場合は、当初はかなり舌の動きが制限されます。そのため、しばらく発音しにくい状態になる傾向があります。
またマウスピース矯正の場合も、装着当初はどうしても違和感を感じることがあります。例えば、舌ったらずな発音になってしまう方もいらっしゃいます。多くの場合は1週間から1ヶ月ほどでスムーズな発音を取り戻せますが、しゃべりにくさを軽減するトレーニング方法もあります。ここでは、それらの手法について解説します。
4-1. 舌のトレーニングについて
滑舌を良くするためのトレーニング方法のポイントを、以下に記します。
①ご自身の顔の表情筋を意識しながら、ゆっくり正しく口を動かす
②ガムを舌に乗せ、丸めたり、押し広げたりする
③大きく「あ・い・う・べ」と口を動かし、「べ」の時に舌を舌に伸ばす
4-2. 発音・発声のトレーニングについて
①母音のみで話す
②早口言葉を何回も繰り返す
③仰向けで腹式呼吸を意識する
例えば母音のみで話そうとすると、しっかり口を動かしお腹から声を出さないと、一語一語が曖昧になります。
また腹式呼吸のイメージがつかない方は、仰向けで呼吸してみるのがおススメです。
5. リテーナー装着の重要性
歯列矯正治療においてリテーナーを装着する目的は、「歯の後戻り」を防止することです。治療期間が完了した直後は、実は歯の周りの骨はしっかり安定していません。その結果、骨が元の形に復元しようとする力が働きます。このような歯の動きを、「後戻り」といいます。
長い治療期間をかけてせっかく歯並びをキレイにしても、歯が元の形に戻ってしまっては意味がありません。
そのため歯が後戻りしないように維持し、矯正後の歯並びを保ち定着させるリテーナーは、とても重要です。
6. リテーナーで喋りにくい理由と対処法まとめ
リテーナー(保定装置)は、矯正治療後の歯の後戻りを防止するとても重要な装置です。しかし装着時は、どうしても喋りにくいという面があります。
このリテーナーは、人の発声や発音、嚥下に大きな役割を果たしている口腔の天井部分を覆う構造になっています。これが、喋りにくくなる大きな要因です。
ほとんどの場合は1~3週間ほどで慣れ、いつも通りの発音ができるようになります。ただし、「舌のトレーニング」や「発音・発声トレーニング」でより滑舌を良くすることもできます。
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監修歯科医師
湊 寛明
私立 広島学院高等学校卒業 国立 九州大学歯学部卒業・歯学学位取得 九州大学病院研修医 終了 埼玉県 オレンジ歯科クリニック 栃木県 丹野歯科医院 山口県 みなと歯科医院 副院長 大手矯正歯科グループ 院長 ピュアリオ歯科・矯正歯科 田町三田院 設立 医療法人社団ピュアスマイル設立、理事長就任
ご挨拶
誰もが憧れる白くて美しい歯で、個人の魅力を最大限に引き出し、 一生涯、歯の疾患で歯を一本も失うことのない未来を創る。
歯の見た目の美しさはもちろん、人が一生涯、長期的かつ健康に機能できるものとなるように、かみ合わせも力学的に良好な治療を考え、総合的な歯科の知識と予防的な概念で治療をしていくのが本当の矯正・矯正歯科治療です。 歯科治療は医療の中でも、医師の考え方や感性・技術、医院の設備によって結果が大きく変わる業界です。 既に神経の治療がされていたり、見た目や適合の悪い大きな被せものが入っていれば話は別ですが、美しさを手に入れるためだけに必要以上に健康な歯を削り、神経を取ってまで無理やりセラミックの被せものをする必要はありません。 患者さまの望む最大の効果を合理的で正しい考え方と治療方法で結果を出すとともに、生涯歯の健康を維持しそこから全身の健康につなげていただけることが何より大切だと思っています。 患者さまのお悩みやご要望をお聞きし、最善の結果となるよう治療をご提案いたします。