光加速矯正装置の真相~マウスピース矯正の期間が半分になるって本当?~

こんにちは。ピュアリオ歯科・矯正歯科 理事長の湊です。

マウスピース矯正はほとんどの場合、1~3年以上と年単位の期間がかかることが一般的です。できれば、なるべく早く綺麗な歯並びになりたいですよね。そこで、矯正期間を短くするために使われる装置が、「オルソパルス」や「PBMヒーリング」などの“光加速矯正装置”です。

光加速矯正装置は、歯周組織に近赤外線光を照射することで代謝を促進し、歯の移動を早めるとされています。光加速矯正装置を用いた矯正を「スピード矯正」として宣伝しているクリニックもありますが、一方で「光加速矯正装置を使ったけれど効果がない」という声も聞かれます。

この記事では、光加速矯正装置の一般的な効果や使い方、費用、メリット・デメリットについて紹介します。

ただ、当院では光加速矯正装置を導入しておりません。光加速矯正装置を利用するだけで治療期間が半分になるというような誇大広告を最近見かけますが、騙されてしまう患者様がいるのではないかと心配しています。

誤解のないようにお伝えしたいのは、私は光加速矯正装置やそれを導入しているクリニックを否定したいわけではなく、光加速矯正装置を利用するだけで治療期間が半分になると誤認できる広告等を目にする機会が増えたため、その様なことはないということを知っていただきたいのです。

マウスピース矯正において光加速矯正装置はスピード矯正の成功要因としては1%にも満たないと実感しております。患者様が求める「なるべく短い期間で矯正治療を終えたい」という本質的なニーズに対して、光加速矯正装置以上に重要なことがあることを知ってほしいのです。

では、スピード矯正の成功要因の残り99%以上は何なのか?

そのことをお伝えする前に、まずは一般的に光加速矯正装置について好意的な解釈を加えてみた場合の情報を以下に紹介します。

スピード矯正(光加速矯正装置 / PBMヒーリングオルソ)とは

歯列矯正を行なっているクリニックの中には、「光加速矯正装置」と呼ばれる装置を使って歯の移動を早め、短期間で治療が完了できるという「スピード矯正」を売りにしているクリニックが存在します。

歯科矯正中に光加速矯正装置を使い、歯の周辺組織に近赤外線光を照射することによって細胞を活性化させ、歯を支える歯槽骨の細胞の代謝が促され、歯が速く移動するといわれています。「なるべく早く矯正したい」という患者さまによく提案される選択肢の一つのようです。光加速矯正装置でもっとも代表的なものが、「オルソパルス (Orthopulse)」や「PBMヒーリング(PBM HEALING)」です。

一般的に光加速矯正装置はこんな方にオススメされています

光加速矯正装置は、以下のような患者さまに勧められるケースが一般的です。

  • なるべく早く歯並びを綺麗にしたい方
  • 歯列矯正の痛みが不安な方

なるべく早く歯並びを綺麗にしたい方

結婚式や成人式などの大切なイベントが控えている方、留学や転勤が決まっている方など、歯並びを綺麗にしたい期限が決まっている方には、オルソパルスの併用が勧められます。

歯列矯正の痛みが不安な方

歯科矯正は、ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも痛みを伴うものです。オルソパルスは歯の移動を促すことで痛みを和らげる効果もあるとされているため、痛みが苦手な方にも、オルソパルスの併用が勧められることがあります。

光加速矯正装置のメリット・デメリット

光加速矯正装置のメリット

光加速矯正装置のメリットは、主に下記の2つとされています。

  • 矯正の治療期間が短くなる
  • 矯正の痛みが和らげられる

矯正の治療期間が短くなる

矯正の治療期間を短くできることが、光加速矯正装置の最大のメリットとされています。

マウスピース矯正では、通常10~14日で新しいマウスピースに交換しますが、光加速矯正装置を使うことで4~5日で交換することが可能になり、その結果、治療期間が最大50%短縮できるとも言われています。

しかし、それは光加速矯正装置による効果でしょうか?このような文章が誇大広告に悪用されることがあるため、この点については後ほど詳しく解説します。

矯正の痛みが和らげられる

歯科矯正に痛みはつきものです。これは、歯に力がかかることによって骨が吸収されるときに痛みの原因物質が放出されるためです。光加速矯正装置を使うと、近赤外線光により細胞の代謝が促進され、痛みも和らげられるとされています。

光加速矯正装置のデメリット

一方で、光加速矯正装置のデメリットには下記のような点があげられます。

  • 費用がかかる
  • 使用に手間がかかる
  • 故障してしまうことがある

費用がかかる

光加速矯正装置の使用は、オプションとして、歯列矯正そのものとは別で料金を設定しているクリニックがほとんどです。光加速矯正装置の追加料金の相場としては、10万~15万円程度です。

使用に手間がかかる

光加速矯正装置は1日10分の使用が必要で、また、3日連続で使用しないと効果が出にくいとも言われています。使用の手間がかかるため、途中で使わなくなってしまう方も少なくありません。

故障してしまうことがある

光加速矯正装置が途中で故障してしまうケースも多く報告されています。

また、故障してしまった場合は、アメリカに送って修理してもらう必要があるため、戻ってくるまで時間がかかってしまいます。

一般的な光加速矯正装置の使い方(使用方法)

光加速矯正装置の使用方法は1日に10分口にくわえるだけというものです。上顎と下顎それぞれ5分ずつ使用します。ワイヤー矯正にもマウスピース矯正にも併用できますが、特にマウスピース矯正との相性がよいとされています。

光加速矯正装置の具体的な使い方は、下記の動画で紹介されています。また、光加速矯正装置には専用クレイドル(専用ケース)と専用アプリがあり、光加速矯正装置をクレイドルに置くと専用アプリとデータが同期でき、光加速矯正装置の使用状況をアプリで確認できるシステムになっています。

光加速矯正装置(PBMオルソ)の料金

光加速矯正装置は、歯列矯正のオプションとして、歯列矯正そのものとは別料金が設定されていることが多いです。料金は歯科医院によって異なりますが、相場は10万~15万円程度です。中には、「スピード矯正」として、光加速矯正装置の費用込みの矯正費用を設定しているクリニックもあります。

一般的な光加速矯正装置によるスピード矯正の仕組み・効果

光加速矯正装置はどんな仕組みでスピード矯正ができるとされているのでしょうか? まず、代表的な光加速矯正装置は柔らかいシリコンでできており、その中にLED光エミッターが埋め込まれています。装置をマウスピースのように口腔内に装着するとスイッチが入り、歯周組織に近赤外線光が照射されます。それによって、骨の代謝が促され、歯の移動も促進されるというものです。

マウスピース矯正の場合、通常10~14日で新しいマウスピースに交換しますが、光加速矯正装置を使うことで、4~5日での交換も可能になり、治療期間は最大50%短縮できるとも言われています。しかし、この点についても光加速矯正装置がスピード矯正の成功要因にどの程度関係するのか、後ほど詳しく解説します。

光加速矯正装置を利用すると治療期間が半分になるのは本当か?

光加速矯正装置を使用するだけで治療期間が半分になるといった誇大広告も見受けられますが、光加速矯正装置を用いてマウスピース矯正を行うことで治療期間が半分になるという医学的データは存在しません。

業界の実情を知っているからこそ言えることですが、光加速矯正装置を使用するだけで治療期間が短縮できるのであれば、どのクリニックで治療を受けても治療期間に差がないことになります。

しかし、実際にはそのようなことはあり得ませんし、光加速矯正装置自体はメーカーから購入すればどのクリニックでも取り扱いが可能です。

スピード矯正における3つの成功要因

患者様がアライナーの装着時間を守ること以外に、スピード矯正において重要な要素は以下の3つです。

1.精確な診断 

CTを用いず二次元のレントゲンだけで検査・診断を行うクリニックもありますが、短期間で矯正を終えるためには、歯の見えている部分だけでなく、骨の中に埋まっている根っこの部分とその周囲の骨の状況を精確に把握することが不可欠です。そのためには、従来の二次元のレントゲンやセファログラムではなく、歯科用CTが必要です。スピード矯正の成功においては30%程度の要因を占めると考えています。

2.適切な治療計画

短期間で治療を完了するためには、歯科医師の経験や技術が盛り込まれた3Dシミュレーションで治療のゴールを設定することが必要です。スピード矯正の成功において、この治療計画が最も重要で50%程度の要因を占めると考えています。

3.適合精度の高いマウスピース

従来の粘土のような型取りでもマウスピース矯正は可能ですが、スピード矯正を成功させるためには、適合精度の高いマウスピースがより合理的です。その中でも最高精度のマウスピースを作るためには、最新の口腔内スキャナーであるiTero Lumina(アイテロルミナ)が必要です。スピード矯正の成功においては20%程度の要因を占めると考えています。

上記の3つの要素に比べると、光加速矯正装置の使用がスピード矯正の成功に与える影響は、わずか1%にも満たない補助的なものと考えています。
ではなぜ光加速矯正装置を使用すると治療期間が50%も短縮できるという誇大広告が生まれてしまうのでしょうか?

ここから誇大広告が生まれてしまう業界の闇を暴いていきたいと思います。

治療期間が50%も短縮できるという広告のカラクリ

そもそも1枚のマウスピースの使用期間が10日~14日の設定自体が10年以上前、まだマウスピース矯正が普及し始めた頃の一般的な設定であり、現在は1週間程度が主流な期間となっています。

また、1クールあたりのマウスピースの枚数が30枚~100枚以上の膨大な量となるような計画が組まれた場合、1枚あたりの歯の動きは非常に緩慢なものとなり、動きの計画によってはそもそも1枚のマウスピースの使用期間は5日前後としても問題ないのが実情です。

この時点でスピード矯正のからくりが明らかになります。

通常のコースを選択される方には1枚の使用期間を10日~14日と伝え、光加速矯正装置を用いたコースを選択された方には1枚の使用期間を5日~1週間にする、それだけのことです。

もうお分かりですよね?

治療期間を半分にする魔法の装置は存在しないのです。
あるのは種も仕掛けもあるスピード矯正プランです。

スピード矯正に光加速矯正装置は不要です

マウスピース矯正において、短期間で適切な治療を終わらせる要因がどのようなものか、実際の経験を踏まえて他の記事でも書いてきましたが、私は光加速矯正装置を用いずとも誇大広告にあるような治療期間の短縮を実現してきました。

かつて光加速矯正装置も勤務医時代を含めて多く経験してきましたが、短期間で治療を終えるために重要なことは、以下の3つの要因です。

  1. 精確な診断
  2. 適切な治療計画
  3. 適合精度の高いマウスピース

スピード矯正において、光をあてるだけで治療期間が半分になるなどという魔法の治療は存在しませんし、矯正治療はそんなに簡単な治療ではありません。

当院ではこれまで2,300人以上の患者様の治療を行い、短期間でさまざまな症例に対応し既に1600人以上の治療を完了させてきました。例えば、4か月、8か月といった短期間でもこんなに綺麗な結果が得られています。

4か月(1クール)で治療となった症例

準備中です

8か月(2クール)で治療完了となった症例

20代 女性
主訴八重歯、全体的なガタガタ
治療期間8か月
治療費66万円
リスク
副作用
効果には個人差があります。
1日20時間以上の装着が守られない場合、望まれる治療結果に影響を与えることがあります

Before

After

治療計画動画

上記は1クール目のシミュレーション動画となります。必ず誤差が生じる為、誤差が出ることを前提にシミュレーションを組んでおります。このようなシミュレーションを複数クールで行うことで短期間かつ的確に患者様のお悩みを改善していきます。

耳障りのよい言葉で患者様を騙し光加速矯正装置を売りつけるのではなく、スピード矯正における本質的な技術や医療設備の提供を行うことこそ、本来患者様が望まれていることではないでしょうか。

繰り返しますが、私は光加速矯正装置や導入クリニックを否定するつもりはありません。
ただ光加速矯正装置=スピード矯正の成功要因の大部分を占めると患者様に誤認を与えるような誇大広告は無くなってほしいと思います。

できるだけ早くお悩みを解決したいとお考えの方には、きっとお力になれるかと思いますので、ご相談いただけますと幸いです。

監修歯科医師

インビザライン ブラックダイヤモンドドクター インビザライン・ジャパン株式会社(旧アライン・テクノロジー社)認定 医療法人社団ピュアスマイル 理事長

湊 寛明

私立 広島学院高等学校卒業 国立 九州大学歯学部卒業・歯学学位取得 九州大学病院研修医 終了 埼玉県 オレンジ歯科クリニック 栃木県 丹野歯科医院 山口県 みなと歯科医院 副院長 大手矯正歯科グループ 院長 ピュアリオ歯科・矯正歯科 田町三田院 設立 医療法人社団ピュアスマイル設立、理事長就任 日本矯正歯科学会日本成人矯正歯科学会/日本舌側矯正歯科学会/世界舌側矯正歯科学会/ヨーロッパ舌側矯正歯科学会/国際インプラント学会/日本口腔インプラント学会/日本歯科審美学会/日本歯周病学会/日本臨床歯周病学会/日本補綴歯科学会/日本口腔外科学会/日本アンチエイジング歯科学会

ご挨拶

誰もが憧れる白くて美しい歯で、個人の魅力を最大限に引き出し、 一生涯、歯の疾患で歯を一本も失うことのない未来を創る。

歯の見た目の美しさはもちろん、人が一生涯、長期的かつ健康に機能できるものとなるように、かみ合わせも力学的に良好な治療を考え、総合的な歯科の知識と予防的な概念で治療をしていくのが本当の矯正・矯正歯科治療です。 歯科治療は医療の中でも、医師の考え方や感性・技術、医院の設備によって結果が大きく変わる業界です。 既に神経の治療がされていたり、見た目や適合の悪い大きな被せものが入っていれば話は別ですが、美しさを手に入れるためだけに必要以上に健康な歯を削り、神経を取ってまで無理やりセラミックの被せものをする必要はありません。 患者さまの望む最大の効果を合理的で正しい考え方と治療方法で結果を出すとともに、生涯歯の健康を維持しそこから全身の健康につなげていただけることが何より大切だと思っています。 患者さまのお悩みやご要望をお聞きし、最善の結果となるよう治療をご提案いたします。

医療法人社団ピュアスマイル 理事長 湊 寛明