過蓋咬合の治し方とは?治療技術や費用相場についても解説します

こんにちは。東京都港区にあるピュアリオ歯科・矯正歯科のスタッフです。

過蓋咬合(かがいこうごう)は、上あごの前歯が下あごの前歯を必要以上に覆ってしまうかみ合わせの異常です。そのまま放置しておくと、歯やあごに様々な問題を引き起こします。

特に成長期のお子さんの場合、早めの矯正治療を行うと効果的に改善できます。

本記事では、過蓋咬合の矯正治療について、解説します。

1. 過蓋咬合の症状

過蓋咬合(かがいこうごう)とは、上下の歯がかみ合ったときに、上の前歯が下の前歯を過度に覆い隠す状態を指します。一般的には「ディープバイト」とも呼ばれ、直訳では「深くかむ」というかみ合わせの異常の一つです。まず最初に、過蓋咬合の特徴を詳しく説明します。

1-1. かみ合わせの状態について

過蓋咬合のかみ合わせの状態は、上の前歯が下の前歯を覆ってしまいます。標準ではかみ合わせたときの下の前歯は、4分の1~3分の1ほどが上の前歯に隠れるとされています。

その結果、前歯がほとんど見えないか、完全に隠れてしまう状態になります。また噛み合わせが深くなり、上の歯と下の歯の間に余裕がなくなります。

1-2. あご関節や顔の症状について

1-2-1. あごの不調

あご関節や筋肉に負担がかかることがあります。その影響で、顎関節症(TMJ障害)やあごの痛み、疲れなどが生じる可能性があります。

1-2-2. 外見への影響

過蓋咬合は、あごが後退しているように見えたり、口元が突き出ている印象を与えることがあります。そのため横顔の外見にも影響を与え、Eラインと呼ばれる美的基準が崩れることがあります。

1-3. 歯に与える影響

1-3-1. 歯が摩耗しやすい

上の歯と下の歯が過剰に触れることで、歯が摩耗しやすくなります。特に下の前歯が上の歯の裏に常に当たる場合、摩耗の度合いは強くなります。

1-3-2. 歯周病のリスクがある

深いかみ合わせの影響で、下の歯が上の歯茎に接触することがあります。すると歯肉が痛み、歯肉炎や歯周病のリスクが高まる可能性があります。

1-3-3. 矯正治療が複雑になる

過蓋咬合の多くは、下顎前突や叢生(そうせい)など、他の噛み合わせの問題を伴います。そのため、矯正治療が複雑になることがあります。

1-4. 日常生活への影響

1-4-1. 発音しにくくなる

かみ合わせの問題から、特定の音を発音しにくくなることがあります。特にサ行やタ行などの音が、不明瞭になることがあります。

1-4-2. 消化に影響が出ることも

過蓋咬合は、前歯でしっかりと食べ物を噛み切ることができません。その結果、奥歯に負担がかかりやすくなります。また食べ物を十分に細かく砕くことができず、消化器官への負担が増加します。

2. 過蓋咬合の原因について

2-1. 遺伝的要因

両親から受け継がれるあごの骨格の形状が、過蓋咬合を引き起こすことがあります。例えば上あごが大きすぎたり、下あごが小さ過ぎると、上の歯が過剰に覆う形になる傾向があります。

また歯の大きさや配置の多くも、遺伝で決まります。歯が大きすぎたり小さすぎたり、または不規則に生えることによって、かみ合わせに影響が出る場合があります。

骨の成長に関する遺伝的な問題がある場合、あごの発達に不均衡が生じます。そのため、過蓋咬合が発生することがあります。

2-2. 舌や口唇の癖

舌の癖(舌突出癖)は、舌が前に押し出されるような動きが習慣化している状態です。特に飲み込みや発音の際に、舌が前歯に強く押し付けられることがあります。これが長期間続くと、前歯が前方に突出し、過蓋咬合の原因や悪化につながることがあります。

また口唇の癖には、無意識に唇を噛む、唇を内側に巻き込む、または唇を閉じる力が弱いなどの癖が含まれます。特に口唇を噛む癖があると、前歯が唇に押し込まれるようになり、前歯の位置が正常ではなくなることがあります。これにより、上下の歯の位置関係が乱れ、過蓋咬合が生じやすくなります。

2-3. あごの成長不良

下あごが適切に発達しないと、上あごが下あごに対して相対的に前に出すぎるため、過蓋咬合が発生します。逆に上あごが過度に成長する場合も過蓋咬合が起こります。上あごが下あごに比べて大きくなると、前歯が下の歯を覆いすぎてしまい、深い噛み合わせが発生します。

2-4. 歯並びの乱れ

乳歯が早期に抜けたり逆に長期間残り過ぎると、永久歯の位置に影響を与え、歯並びが乱れやすくなります。その結果、過蓋咬合が引き起こされることがあります。

また歯があごの中で適切な位置に生えないと、過蓋咬合につながることがあります。例えば前歯が密集している場合、上あごの前歯が過度に前方に押し出されることがあります。

3. 過蓋咬合の治療技術

過蓋咬合の治療技術には、「圧下」「挺出」「傾斜移動」があります。それぞれ以下に解説します。

3-1. 圧下(Intrusion)という治療技術

過蓋咬合の治療方法の一つとして、「圧下(あっか)」という手法があります。圧下は、歯そのものを骨の中に押し込むようにして動かす矯正治療の技術です。過蓋咬合の場合、上あごの前歯が下あごの前歯を覆いすぎているため、上あごの前歯を圧下して、かみ合わせを改善します。

または前歯を前に出すことで、上あごと下あごの位置を調整する方法もあります。この場合、前に出し過ぎると出っ歯になってしまいます。そのため、圧下と傾斜移動を組み合わせたり、傾斜移動と奥歯の挺出を組み合わせて治療をする場合があります。

具体的な流れを、以下に記します。

3-1-1. 口腔全体の診断

まず最初に、歯科医師がX線や3Dスキャンなどを使って口腔全体の状況を詳細に診断します。過蓋咬合の度合いや、他の歯並びの問題を確認し、最適な治療計画を立てます。

3-1-2. 矯正装置の使用

ブラケットやワイヤー、マウスピース型の矯正装置を使って、圧下する歯に適切な力をかけます。そしてゆっくりと骨の中に歯を沈めていきます。

圧下には非常に微細な力が必要ですが、強すぎると歯根の吸収や骨のダメージを引き起こす可能性があります。そのため、治療は慎重に行われます。

3-1-3. 定期的な診察と調整

治療は数ヶ月から1年程度行われ、定期的な診察や調整が必要です。また歯が正しい位置に収まるまで、進捗を確認しながら矯正力を調整します。

3-1-4. リテーナー(保定装置)の使用

治療完了後、圧下した歯が再び元の位置に戻らないようにする必要があります。そのためリテーナーと呼ばれる保定装置が使用され、かみ合わせを安定させます。

3-2. 挺出という治療技術

挺出とは、歯をあごの骨から上方または下方に移動させる治療技術です。過蓋咬合の場合、上の前歯が下の前歯に被さっているため、下の前歯を挺出させて、噛み合わせのバランスを取ります。具体的には、歯をゆっくりと引き上げたり引き下げたりすることで、理想的な位置に移動させます。

また奥歯は、挺出でかみ合わせを改善します。また奥歯を外側に傾斜させることで歯列弓を広げます。その結果、上あごと下あごの当たる位置を改善します。

挺出だけで歯を移動させられる長さには、限界があります。そのため、圧下や傾斜移動と合わせて行うこともよくあります。

具体的な流れを、以下に記します。

3-2-1. 矯正装置による歯の移動

挺出は、ブラケットやワイヤー、エラスティック、アライナーなどの矯正装置を使用して行われます。矯正装置の持続的な力が歯に加わり、歯が少しずつ理想的な位置に移動します。

例えば、ブラケットを歯に装着しワイヤーによって力を加えることで、下の前歯が挺出し、上の前歯との重なりが改善されます。

3-2-2. インプラントアンカーを使用することも

状況によっては、矯正力を強化するためにインプラントアンカー(TAD)と呼ばれる小さなネジのような装置をあごの骨に埋め込みます。

これにより、固定源として歯を引き出す際により安定した力をかけることができ、挺出が効果的に行われます。

3-2-3. 定期的な通院で矯正装置を調整

挺出は、歯を一気に大きく動かすわけではなく、少しずつ段階的に行われます。そのため、定期的な通院で矯正装置を調整し、進捗を確認する必要があります。

治療期間は人によって異なりますが、数ヶ月から数年かけて行われることが一般的です。

3-3. 傾斜移動という治療技術

傾斜移動は、歯をその根元の部分を固定したまま、歯冠(歯の上部)だけを傾けて移動させる技術です。ティッピング・ムーブメントともいいます。

過蓋咬合の矯正では、前歯が過度に覆いかぶさっている場合に前歯を後ろや前に傾けることで、咬合を改善します。

3-3-1. 歯の位置や骨格の状況を把握

歯科医院の歯科医師が、レントゲンや3Dスキャンを使って検査し、歯の位置や骨格の状態を正確に把握します。

3-3-2. 治療計画の作成

傾斜移動が適切と判断された場合、歯の動かし方や必要な期間を決定し、治療計画を作成します。場合によっては、他の矯正技術と併用することもあります。

3-3-3. 矯正器具の装着

ブラケットや透明なマウスピースを使って、歯の傾きを調整します。インビザラインに代表されるマウスピースは、見た目が気になる方に人気があります。

3-3-4. 治療経過のモニタリング

患者さんは定期的に通院し、歯の移動状況を確認します。そして矯正機器の調整を行います。

3-3-5. 治療経過のモニタリング

歯の位置が治療計画の目標に達すると、リテーナーなどを使用して、歯を新しい位置に安定させます。

4. 過蓋咬合の治療方法と費用相場

4-1. ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は、ブラケットと呼ばれる器具を歯に装着します。次にワイヤーを通して、動かしたい方向に向かって歯に適切な力を加え、徐々に歯を移動させていきます。その結果、歯並びを美しく改善できます。

過蓋咬合の治療において効果的に圧下する場合、アンカースクリューを固定源にする場合があります。アンカースクリューとは、チタン製の小さな医療用ネジのことです。あごの骨に埋め込むことで、効率的に歯を移動させることができます。

また挺出の場合に、顎間ゴム(エラスティックゴム)を補助装置として使うことがあります。矯正治療中の顎間ゴムは、正しいかみ合わせを実現するための効果的な補助装置の一つです。

自由診療70万円
その他の費用1~2ヶ月に1度の調整日に必要な調査料(5,000円)
調整料込のトータルフィーの場合85万円

4-2. マウスピース矯正

マウスピース矯正とは、ワイヤーやブラケットを使わず、透明なマウスピース型の装置で歯を動かす矯正方法です。

過蓋咬合には向かないこともありますが、アタッチメントの装着で挺出したり、傾斜移動させることで過蓋咬合の状態によっては治療できることもあります。

自由診療60万円(中等度、トータルフィー)
その他の費用専門相談料7万円
中等度以上の場合80万円~100万円

4-3. 小児矯正一式

過蓋咬合の原因の一つが、下あごが小さいという遺伝的要因です。そのため咬合育形成という小児矯正で下あごの成長を促したり、上あごの過度な成長を整えることで、適正な咬み合わせを作ることができます。

自由診療40万円
その他の費用1~2ヶ月に1度の調整日に必要な調査料(5,000円)

5. 過蓋咬合の早期治療の重要性

過蓋咬合の早期治療はとても重要です。特に成長期にある子どもたちの場合、あごや歯の成長が進むにつれて、早めに矯正を行うことで効果的に改善できるためです。ポイントを、以下に記します。

5-1. 顎関節症のリスク

過蓋咬合があると、下あごが前方に十分に成長できず、顔のバランスが崩れることがあります。そして下あごが後退している状態が続くと、あご関節に過剰な負担がかかり、顎関節症のリスクが高まります。

5-2. 歯のすり減りや歯周病のリスク

過蓋咬合は、かみ合わせが悪く、特定の歯に過剰な力がかかることがあります。その結果、歯のすり減りや損傷、歯周病などのリスクが高まります。

5-3. 発音や栄養バランスへの影響

過蓋咬合は上下の前歯の間に十分なスペースがない状態です。そのため発音がしにくくなったり、食事中に食べ物をうまく噛み切れないことがあります。特に幼少期にこれらの問題があると、正しい発音が身につかなかったり、食べ物をうまく摂取できないことから栄養バランスに影響を与えることがあります。

5-4. 自信が持てなくなる

歯並びや噛み合わせが悪いことにより、自分に自信が持てなくなる子どもや思春期の若者が多くいます。例えば笑顔に自信を持てなかったり、人前で話すことに抵抗を感じてしまうことがあります。

6. まとめ

過蓋咬合は一見わからないことが多く、顎関節症や奥歯が不調になってから気づかれる方も多くいらっしゃいます。

しかし、すでに顎関節症になってしまった場合、矯正治療をすることはできません。また奥歯が割れたりしてしまうと、復元することはできません。

そうならないためには、定期的に歯科医院の診断を受けることをおススメします。そこで過蓋咬合と診断された場合、早めの歯列矯正をご検討下さい。

ピュアリオ歯科・矯正歯科は、世界的ブランドのインビザラインによるマウスピース矯正治療を提供しています。

豊富な症例データから導き出される精度の高い治療シミュレーションと、そのデータに基づき作成する治療計画、そして歯科医師の確かな技術によって、効果的な矯正治療を提供しています。

当院では、LINE通話やZoomによる無料オンラインカウンセリングを実施しています。ぜひお気軽にお問い合せください。

監修歯科医師

インビザライン ブラックダイヤモンドドクター インビザライン・ジャパン株式会社(旧アライン・テクノロジー社)認定 医療法人社団ピュアスマイル 理事長

湊 寛明

私立 広島学院高等学校卒業 国立 九州大学歯学部卒業・歯学学位取得 九州大学病院研修医 終了 埼玉県 オレンジ歯科クリニック 栃木県 丹野歯科医院 山口県 みなと歯科医院 副院長 大手矯正歯科グループ 院長 ピュアリオ歯科・矯正歯科 田町三田院 設立 医療法人社団ピュアスマイル設立、理事長就任 

ご挨拶

誰もが憧れる白くて美しい歯で、個人の魅力を最大限に引き出し、 一生涯、歯の疾患で歯を一本も失うことのない未来を創る。

歯の見た目の美しさはもちろん、人が一生涯、長期的かつ健康に機能できるものとなるように、かみ合わせも力学的に良好な治療を考え、総合的な歯科の知識と予防的な概念で治療をしていくのが本当の矯正・矯正歯科治療です。 歯科治療は医療の中でも、医師の考え方や感性・技術、医院の設備によって結果が大きく変わる業界です。 既に神経の治療がされていたり、見た目や適合の悪い大きな被せものが入っていれば話は別ですが、美しさを手に入れるためだけに必要以上に健康な歯を削り、神経を取ってまで無理やりセラミックの被せものをする必要はありません。 患者さまの望む最大の効果を合理的で正しい考え方と治療方法で結果を出すとともに、生涯歯の健康を維持しそこから全身の健康につなげていただけることが何より大切だと思っています。 患者さまのお悩みやご要望をお聞きし、最善の結果となるよう治療をご提案いたします。

医療法人社団ピュアスマイル 理事長 湊 寛明