出っ歯やすきっ歯など、口元の一部分だけを治したいと悩まれている方は多いです。その矯正治療は、部分矯正になります。部分矯正は治療期間も短く、費用もリーズナブルに安く抑えることができます。一般的に全体矯正よりも費用が安いので、手軽に歯の矯正治療に入れます。
本記事では、部分矯正ができない例や治療できる範囲、その判断基準について、解説します。
この記事でわかること
1. 部分矯正とは?
部分矯正とは、一部分の歯を動かすことを目的とした治療方法のことです。つまり、出っ歯やすきっ歯など、気になる箇所だけを整えることができます。
治療期間は3ヶ月~1年前後で、全体矯正と比べると治療費も抑えることが可能です。部分矯正で対応できるかは、一般的に精密検査の結果をもとに判断します。
2. 部分矯正できない例
「気になる部分だけ矯正して歯を整えたい」と希望する患者さんは、多くいらっしゃいます。例えば「数本の歯だけを部分矯正したい」と思っても、治療の条件を満たさないと実行できません。
以下に、部分矯正では対応できないケースを解説します。
2-1. 前歯や八重歯のスペースが足りない
1本ずつの歯を少量ずつ削ることにより、歯を動かすスペースを生み出す方法を「IPR」(interproximal enamel reduction)と言います。この方法は、歯の表面のエナメル質を少し削るだけです。そのため、問題は起こりません。
一般的に、日本人では歯一本につき片側0.25mm、両側で0.5mmまでが安全だといわれています。このIPRは、前歯や八重歯だけを部分矯正する場合によく行われます。その理由は、歯の大きさに対して歯を収める土台が小さいことが挙げられます。ただし歯が大きすぎたり、歯が重なりあっている状態が深刻な場合、IPRを活用した部分矯正はできません。
2-2. 出っ歯を引っ込めたい
「出っ歯」とは、上顎の歯列が前方へと突き出ている状態のことを指します。上側の歯列全体が突き出ていたり、前歯に角度がついて出っ歯になる場合もあります。
いずれの場合においても、前歯と奥歯を連動させ、全体的に歯並びと噛み合わせを整えながら、前歯を下げる必要があります。このような場合、部分矯正の治療での対応は基本的に不可能です。
2-3. 前歯が閉じない歯並びの場合
前歯が閉じない歯並びのことを、「開咬(かいこう)」といいます。具体的には、奥歯はしっかりと噛み合っているものの、前歯が開いてしまっている状態です。
この場合「前歯だけを治すから部分矯正はできる」と考えがちですが、これは誤りです。なぜなら「噛み合っている奥歯」と「開いている前歯」の両方を治療するため、全体矯正の治療が必要だからです。場合によっては、外科手術が必要になる可能性があります。
2-4. 正中が合わずに左右非対称な状態
前歯2本の間を通る中心の縦線を、「正中(せいちゅう)」といいます。この線が、上側と下側で揃わない場合があります。正中が真ん中で揃わなくなるのは、多くの場合どこかにズレが生じているからです。
それを治すには、全体矯正がおススメです。なぜなら、骨格に問題があったり、噛み合わせに不具合がある可能性が高いからです。
3. 部分矯正で治療できる範囲
では部分矯正では、どこまで治せるのでしょうか。以下に具体的症例を通して解説します。
3-1. 特定の歯の不正咬合
特定の歯がうまく咬み合わせできない場合、部分矯正が効果的です。具体的には、前歯の隙間や歯の重なり等、1本1本の歯に対する不具合を治療することに向いています。
3-2. 歯の傾斜や回転
部分矯正は、歯の傾きや回転の治療にも有効です。一部の歯に限定して矯正を行うことによって、正常な咬合ができる歯の位置に近づけます。
3-3. 部分的な歯の美しさを実現
特定の歯の形や色調を治したい場合において、部分矯正は効果的です。例えば前歯の形を少し整えたり、ホワイトニングすることで、より美しい笑顔に生まれ変わります。
3-4. 局所的な歯列不正
部分矯正は、特定の範囲の歯列不正にも適応できます。具体的には、上顎の一部の歯が傾斜していたり、下顎の歯が前後に出っ張っているような場合です。
3-5. 全体矯正を補完する
全体矯正の治療後に、部分矯正で残りの部分を治療することがあります。例えば、まず全体矯正で主要な歯列不正を改善します。その後、部分矯正で細かい修正や調整を行います。全体矯正と部分矯正を組み合わせることで、完成度の高い歯並びを実現することができます。
部分矯正は、多くはこのような症例に適応されます。ただ患者さんによって、個人差はあります。歯の状態に即した最適な治療方法は、歯科医師との相談や詳細な検査を通じて決めるようにしましょう。
4. 部分矯正ができる・できないの判断基準
ここでは、部分矯正が可能かどうかの判断基準について、解説します。
4-1. 重度な歯列不正の場合
部分矯正は、一部の歯や特定の箇所に対してのみ行われる治療です。そのため、歯列全体の重度な不具合には限定的な効果しかありません。重度な歯列不正の場合は、全体矯正を行う必要があるでしょう。
4-2. 咬み合わせの問題がある
特定の歯の位置や傾斜を修正するのが、一般的な部分矯正の機能です。つまり咬み合わせ全体に関わる問題には、部分矯正は限定的な対応しかできません。咬み合わせの問題の場合、全体矯正か他の治療法が必要になる可能性が高いです。
4-3. 歯の数や配置に制約される
部分矯正が適用できる範囲は、歯の本数や配置によっても制約されます。具体的には、隣り合った歯の間に十分なスペースがない場合は部分矯正が困難な場合があります。また歯の根の状態によっても、できない場合があります。
4-4. 歯周組織の健康状態も大切
歯周病や歯周組織に炎症がある場合、それらの治療が先行して行われる必要があります。なぜなら部分矯正をするためには、歯周組織が健康である必要があるからです。
そのため、部分矯正の適用範囲を評価するためには、詳細な検査や歯科医師との相談が必要です。そうすることで、ご自身にとって最適な治療プランが実現します。
5. 部分矯正ができない例の代替治療法
部分矯正が治療できない場合は、以下の2つの治療法を検討しましょう。
5-1. ワイヤー矯正
最も歴史が古いワイヤー矯正は、多くの歯列矯正実績があります。そして部分矯正ができないと判断された歯並びの患者さんでも、治療できる可能性があります。
近年は、透明のブラケットや白いワイヤーなど、目立ちにくいワイヤー矯正もあります。また裏側矯正は、正面からは矯正装置が見えません。それぞれ長所と短所があるので、それらを理解した上で選択することをおススメします。
5-2. 部分矯正とワイヤー矯正の併用
部分矯正では治療できない症例でも、ワイヤー矯正との併用で治療できる場合があります。例えば、最初にワイヤー矯正で大きく歯を動かします。そして最終的な微調整を、部分矯正で行います。
部分矯正とワイヤー矯正を併用できるかどうかは、歯科医師に確認してみましょう。
6. 部分矯正できない例のまとめ
部分矯正は、一部分の歯を動かす治療方法です。治療期間が短く、費用も安いので、歯の矯正治療としては受診しやすいといえるでしょう。
しかし部分的に見えても、実は全体矯正が必要になる症例があります。本記事では、部分矯正できない例を通じて、解説してきました。
部分矯正の長所が最大限発揮される治療プランで、是非美しい歯並びを実現して下さい。
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監修歯科医師

医療法人社団ピュアスマイル 理事長 湊寛明
経歴
私立 広島学院高等学校卒業 国立 九州大学歯学部卒業・歯学学位取得 九州大学病院研修医 終了 埼玉県 オレンジ歯科クリニック 栃木県 丹野歯科医院 山口県 みなと歯科医院 副院長 大手矯正歯科グループ 院長 ピュアリオ歯科・矯正歯科 田町三田院 設立 医療法人社団ピュアスマイル設立、理事長就任
ご挨拶
誰もが憧れる白くて美しい歯で、個人の魅力を最大限に引き出し、 一生涯、歯の疾患で歯を一本も失うことのない未来を創る。

歯の見た目の美しさはもちろん、人が一生涯、長期的かつ健康に機能できるものとなるように、かみ合わせも力学的に良好な治療を考え、総合的な歯科の知識と予防的な概念で治療をしていくのが本当の矯正・矯正歯科治療です。 歯科治療は医療の中でも、医師の考え方や感性・技術、医院の設備によって結果が大きく変わる業界です。 既に神経の治療がされていたり、見た目や適合の悪い大きな被せものが入っていれば話は別ですが、美しさを手に入れるためだけに必要以上に健康な歯を削り、神経を取ってまで無理やりセラミックの被せものをする必要はありません。 患者さまの望む最大の効果を合理的で正しい考え方と治療方法で結果を出すとともに、生涯歯の健康を維持しそこから全身の健康につなげていただけることが何より大切だと思っています。 患者さまのお悩みやご要望をお聞きし、最善の結果となるよう治療をご提案いたします。