今回は、”マウスピース矯正をおすすめしない理由~膨大なマウスピース矯正の治療経験を経てわかったこと~”というテーマでお届けします。
この記事でわかること
なぜマウスピース矯正はおすすめしないといわれるのか?
近年、歯列矯正において、ワイヤー矯正ではなく、マウスピース矯正を選ばれる方が増えています。
人気の理由は、マウスピース矯正には
- 透明だから目立たない
- ワイヤー矯正のような強い痛みがない
- 取り外しができるから清潔
- ワイヤー矯正よりも治療期間が短い
など、様々なメリットがあるからです。
一方で、「マウスピース矯正はおすすめしない」という声もネット上で多く見かけます。マウスピース矯正に興味はあるけれど、ネットでマイナスな情報を見たら心配になってしまった、という方も多い印象です。
では、マウスピース矯正がおすすめしないと言われる理由、マウスピース矯正のデメリットとは何なのでしょうか?
マウスピース矯正のよく聞くデメリット
マウスピース矯正のデメリットとして一般的に出回っているものには、以下のようなものがあります。
①毎日20時間以上装着しなければならない
②かみ合わせが悪くなることがある
③難しい歯並びは治せない
④歯並びが後戻りしやすい
こうしたデメリットは本当なのでしょうか?また、こうしたことがデメリットとされている理由は何なのでしょうか?
毎日20時間以上装着しなければならない
マウスピース矯正が毎日20時間以上装着しなければならないのは事実です。
矯正で歯を動かすためには、持続的に歯に力をかけ続けることが必要だからです。ワイヤー矯正の場合、自分で取り外しができないため、24時間ずっと強制的に歯に力がかかり続けます。
一方、マウスピース矯正は取り外しができるため、意識して毎日20時間以上つけなくてはなりません。もし患者様の意志が弱くサボってしまったら治療が進まないため、デメリットでもあると言われているのです。
ただ、いざ治療が始まってしまえば、食事のとき以外はマウスピースを着けることがすぐに習慣になり、慣れてしまうという方がほとんどです。
(親御さんの方針で矯正を始める小中学生~高校生の患者様は、治療が続かなくなってしまうこともあるため親御さんの指導が必要ですが、ご自身の意思がしっかりとあり慣れてしまえば、問題なく進められています)
また、治療期間中ずっと着けっぱなしのワイヤー矯正とは違い、
・治療期間中に人前に出たり写真撮影をする機会があっても目立たないこと
・外して食事ができるため食べるときの痛みがほとんどないこと
・歯磨きがしっかりとできて歯の健康が守れること
などのメリットを考えれば、ご本人のやる気次第で乗り越えられる20時間以上の装着は、克服できるデメリットといえるのではないでしょうか。
かみ合わせが悪くなることがある
「マウスピース矯正は、見た目は綺麗に揃っても、かみ合わせが悪くなってしまう」と、歯科クリニックで説明を受けたり、ネット上で見かけた方も多くいらっしゃるようです。
この理由は、マウスピース矯正は20時間以上マウスピースを歯に被せているため、1日の大半を上下の歯が直接かみ合っていない状態で治療が進むことにあります。最終的にマウスピースを外したときに、かみ合わせがおかしくなってしまうことがあるのです。
一方で、ワイヤー矯正の場合、24時間しっかりと上下の歯が直接かみ合った状態で矯正が進み、さらに月1回のワイヤー交換時に歯並びの経過を診ながら調整ができます。
そのため、治療中のかみ合わせの管理についてはマウスピース矯正よりワイヤー矯正の方が調整しやすく、優位性があるといわれているのです。
でも、マウスピース矯正であっても、ドクターがかみ合わせの調整まで加味した治療計画をしっかりと立て、治療終了時にも細やかな調整(咬合調整)を行えば、かみ合わせの失敗が起こることはまずありません。
たくさんの治療経験を持つドクターが最終的なかみ合わせを考慮した治療計画を作ることが重要なのです。
難しい歯並びは治せない
矯正を希望される患者様の中で、「自分の歯並びはマウスピース矯正では治らないと言われた」「ワイヤー矯正と併用しないと治せないと言われた」とおっしゃる方が多くいらっしゃいます。
たしかに、マウスピース矯正では難しい歯並びに対応できないクリニックはとても多いです。
まず、ワイヤー矯正とマウスピース矯正とでは、歯の動かし方、治療の進め方がまったく異なります。
ワイヤー矯正は昔からある治療法のため、日本では症例数がマウスピース矯正よりも圧倒的に多いのが現状です。
近年は、「流行っているから」という理由でマウスピース矯正を取り入れるクリニックも多く、マウスピース矯正を行うドクターはすでに10,000人以上にもなっています。でも、そのうちのほとんどのドクターがこれまで長年ワイヤー矯正しか行ってきていないため、ワイヤー矯正ではたくさんの治療経験があっても、マウスピース矯正ではまだ治療経験を積んでいません。
そのため、同じ歯並びであっても、ワイヤー矯正では治せても、マウスピース矯正では治せないドクターが多いのです。
「マウスピース矯正では治せない」「ワイヤー矯正と併用しないと治せない」と言うドクターが多いのはこのためです。
たとえ難しい歯並びでも、マウスピース矯正での治療経験をたくさん積んだドクターであれば、マウスピース矯正で治せる歯並びの範囲は格段に広がります。
歯並びが後戻りしやすい
「マウスピース矯正は後戻りしやすい」と聞かれたことのある方もいらっしゃるようです。
でも実際、後戻りのしやすさについては、ワイヤー矯正もマウスピース矯正も変わりません。
矯正治療では、歯に持続的に力をかけることによって歯を動かしていきます。その力によって、歯の根っこの周りの歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる骨が吸収したり、新たにつくられたりしながら歯が動いていくという仕組みです。
矯正治療が終わったばかりのときには、歯槽骨や歯の周りの組織がまだ不安定で元に戻りやすい状態になっています。矯正が終わったからといって、後戻り防止の装置(後述します)を十分につけていないと、マウスピース矯正でもワイヤー矯正でも、歯は元の位置に戻ってしまうのです。
また、無意識に歯を舌で押してしまう、頬杖をつくなどのクセがもともとの歯並びに影響していた場合、矯正装置を外して同じクセを続けていたら、これもまた後戻りを引き起こす要因になります。
しかしながら、後戻りは、矯正後に歯並びをキープするための「保定装置(リテーナー)」を着けることで防ぐことができます。
保定装置の装着期間は、ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも、矯正治療が終わってから歯並びが安定するまでの間の最低2年間が推奨されています(この期間を「保定期間」といいます)。
なお、保定装置の装着時間について、中には「寝るときだけで大丈夫」「週2~3回でよい」としているドクターも多いですが、その通りにして後戻りしてしまったという患者様は相当数いらっしゃいます。本来は、保定装置も20時間以上の装着が必要です。クリニックにとっては、患者様によっては面倒に感じられてしまうマイナスな部分のためはっきりと伝えないのかもしれませんが、後戻りをせずに長い目での患者様の健康やご満足のためにとても大切なことですので、適切な装着時間をしっかりと指導してくれるドクターを選びましょう。
マウスピース矯正の本質的なデメリット
ここまで、一般的に言われているマウスピース矯正のデメリットについてお話してきました。
でも、実はマウスピース矯正の本当のデメリットは、ネット上では出回っていません。
一般的には知られていない本質的なデメリットには、以下のようなものがあります。
①イメージ通りの歯並びにならないことがある
②治療期間が大幅に延びてしまう
③本当に治療経験が豊富なドクターかわかりづらい
ここからは、ほとんど表には出ていないマウスピース矯正の本質的なデメリットについて、年間380症例以上の治療経験を持つドクターが解説します。
イメージ通りの歯並びにならないことがある
昨今、マウスピース矯正では、治療計画として3Dのシミュレーションを用いるクリニックが主流になってきています。
これは、矯正治療が始まる前に、今の歯並びをスキャン(型取り)して、そのデータをもとに歯並びの動きをシミュレーションしたものです。矯正後の歯並びのイメージを患者様自身が事前に見ることができ、安心して治療が始められることがシミュレーションの大きなメリットの一つです。
しかしながら、「シミュレーション通りの歯並びにならなかった」「歯が動かなかった」というケースも多いのが実情です。
どうしてシミュレーションの通りに歯が動かないのでしょうか?
その原因は、シミュレーションの作り方にあります。
シミュレーションは、歯並びをスキャンする口腔内3Dスキャナー(アイテロ)のデータをもとに、AIを用いたソフトウェアによって自動で作成できます。
一般的なクリニックでは、この自動作成のシミュレーションをそのまま、もしくはドクターが少し手を加えて、治療計画として使用しています。
ただ、ここで注意したいのは、スキャンしているのはあくまで歯並びだけのため、シミュレーションには、歯の骨(歯槽骨)や根っこ(歯根)の動きまでは加味されていないということです。
矯正治療は、歯の見えている部分だけでなく、歯の根っこの周りの骨が作り変えられたりしながら動いていく治療です。そのため、できる限り正確なシミュレーションを作るには、歯1本1本の骨や根っこの状態までしっかりとCTで精密検査をして、ドクターが検査結果を分析する必要があります。
自動で作成されたシミュレーションはもちろん、そのような工程は経ておらず、ドクターが患者様の歯1本1本の骨や根っこの状態まで分析して組まれた計画ではないので、実際には無理な動きが想定されていることもあります。結果として、歯がシミュレーション通りに動かずに大きな誤差が出て、予定通りの綺麗な仕上がりにならないことが多いのです。
最近では、カウンセリングに行くとその場でシミュレーションを見せてくれるクリニックが増えていますが、即日で作られたシミュレーションは、当然ながらドクターによる綿密な分析なしに簡易的に作られたもので、実際には達成できないものになっていることも多いため、注意が必要です。
もし、その簡易的なシミュレーションで治療を行った場合、綺麗な歯並びに仕上がらないだけではなく、様々なデメリットが発生してしまいます。
シミュレーションは本来、そんなに簡単に作れるものでも、作って良いものでもありません。正確にCTでの精密検査をした上で、治療経験の豊富なドクターがしっかりと手間をかけて作ることが重要なのです。
治療期間が大幅に延びてしまう
マウスピース矯正では、治療期間が当初の予定よりも大幅に延びるケースも目立ちます。
これについても、①で説明した通り、多くの歯科クリニックでは治療計画として、ドクターが患者様の歯1本1本を分析して作ったシミュレーションではなく、AIのソフトウェアによって自動作成されたシミュレーションが使われており、歯がその通りに動かないことに理由があります。
「マウスピース矯正はワイヤー矯正よりも早い(治療期間が短い)」と言われていますが、実際には、一般的なマウスピース矯正の治療期間は1年~5年、またはそれ以上かかる場合も見られるのが現状です。
なぜこんなに治療期間が長くなったり、期間にバラつきがあるのかというと、途中で歯の動きに誤差が出ることによってマウスピースの作り直しや治療のやり直しが何度も発生するためです。
結果として、最初に伝えられていた治療期間の倍以上かかってしまうケースも少なくありません。1年と言われていたのに2年かかった、2年と言われていたのに5年かかった…といった具合です。
治療期間が大幅に延びてしまうことを防ぐためには、できる限り誤差を最小限に抑えられるように、実際に動かせる歯並びと近いシミュレーションになっていることが重要です。
(半年~1年で終わるとされている部分矯正も出回っていますが、奥歯まで動かせないためかみ合わせが崩れてしまう、ガタつきは解消しても出っ歯になってしまう、前歯で咬めなくなってしまう、などの失敗が多発しています。適用ではない患者様に無理やり部分矯正で治療をしてしまうと、最悪の場合、歯槽骨からはみ出たところに歯の根っこが並んでしまい、将来的に歯を失ってしまう失敗にもつながるため、注意が必要です)
本当に治療経験が豊富なドクターがわかりづらい
マウスピース矯正は、従来のワイヤー矯正とは違い、新しい治療法です。
人気があるため、取り入れる歯科クリニックは近年とても増えていますが、まだ、そのドクターすべてがマウスピース矯正で十分な実績や経験を積んでいるわけではありません。これまでワイヤー矯正での治療経験しかないドクターまでもがいきなりマウスピース矯正を扱うようになったため、失敗が多く起きているのです。
よくある失敗例は、
- 歯並びが動かなかった
- かみ合わせがわるくなってしまった
- 歯の根っこ(歯根)が露出してしまった
などで、やり直しや処置にさらに高額な費用がかかったり、取り返しのつかないケースも目立ちます。
そのため、やはりマウスピース矯正で多くの症例実績のあるドクターが、技術や経験をもとに治療計画を立てることが何より重要です。
では、多くの症例経験のあるドクターを見つけるには、どうしたらよいのでしょうか?
その目安のひとつが、インビザライン社の「ダイヤモンドドクター」です。
マウスピース矯正インビザラインには「インビザライン・プロバイダー制度」があり、インビザラインの治療実績によってドクターに与えられる、7段階のランクが設定されています。この中でトップクラスにあたるのが「ダイヤモンドドクター」で、年間150症例以上のドクターにのみ与えられるものです。
ただ、注意が必要なのは、「ダイヤモンドドクターの称号は、本当にすべてそのドクターの実績によるものなのか?」という点です。
症例数はクリニック(分院含む)単位でカウントされるため、院長自身ではなく、そのクリニックの勤務医の先生たちが治療計画をつくった症例であってもすべて合計され、院長にダイヤモンドドクターの称号が与えられてしまっているケースも少なくありません。
そのため、広告等で「ダイヤモンドドクター」を謳っているからといって、院長個人に必ずしも多く(年間150症例以上)の実績があるわけではありません。そして、そのクリニックで治療をしたとしても、あなたの治療計画を立ててくれるのが必ずしも経験豊富なベテランのドクターであるとも限らないのです。
また、症例数は、矯正治療がスタートする時点でカウントされるため、治療結果の良し悪しは加味されていません。ほとんどの患者様の治療が無事に終わっていなくても、結果的に失敗するような治療計画を立てていたとしても、契約した患者様の数だけでダイヤモンドドクターの称号が与えられ、肩書きとして謳えてしまうところにも注意が必要です。
ここ数年で人気になり始めたばかりのマウスピース矯正で、実際に様々な症例で多くの患者様の治療を成功に導けているドクターは本当に一握りです。
マウスピース矯正では、どんなに綿密な治療計画を立てたとしてもそれで終わりではなく、治療途中での実際の歯の動きや誤差に応じて治療を進めていくことが大前提となります。治療計画を立てたドクターが、治療の経過や仕上がりをしっかりと追って、適切に治療を進めていくことが必須です。
マウスピース矯正で失敗しないためにチェックすること
マウスピース矯正がおすすめしないと言われている理由や、一般には出回っていない本質的なデメリットについて、ご理解いただけましたでしょうか。
あらためて、これからマウスピース矯正を考えている方が、歯科クリニックを選ばれる上でチェックしていただきたい主な項目を簡単にまとめます。
- CTによる精密検査を行い、歯の骨や根っこの状態までしっかりと分析されているか?
- 治療計画のシミュレーションはAIによる自動作成ではなく、症例実績の豊富なドクターが作成しているか?
- 「ダイヤモンドドクター」の称号は、ドクター個人の実績によるものか?
ホームページにはそこまで細やかな記載のない場合がほとんどですので、カウンセリングや問い合わせで直接クリニックに聞いてみて、納得のいく返事が返ってくるクリニックを選んでくださいね。
ピュアリオ歯科・矯正歯科では、すべての患者様の治療計画を、必ずブラックダイヤモンドステータスを持つ院長自身が作成することをお約束しています。
また、AIでのプログラミングによる自動作成ではなく、患者様おひとりおひとりに合わせて、CT精密検査によって歯の骨や根っこの動きまで綿密に分析した上で、より正確で安全な治療計画を作成しています。
歯列矯正は、基本的には一生に一度のもので、費用も決して安くはありません。本当に安心して治療を任せられるドクターを見つける参考になりましたら幸いです。
監修歯科医師
湊 寛明
私立 広島学院高等学校卒業 国立 九州大学歯学部卒業・歯学学位取得 九州大学病院研修医 終了 埼玉県 オレンジ歯科クリニック 栃木県 丹野歯科医院 山口県 みなと歯科医院 副院長 大手矯正歯科グループ 院長 ピュアリオ歯科・矯正歯科 田町三田院 設立 医療法人社団ピュアスマイル設立、理事長就任
ご挨拶
誰もが憧れる白くて美しい歯で、個人の魅力を最大限に引き出し、 一生涯、歯の疾患で歯を一本も失うことのない未来を創る。
歯の見た目の美しさはもちろん、人が一生涯、長期的かつ健康に機能できるものとなるように、かみ合わせも力学的に良好な治療を考え、総合的な歯科の知識と予防的な概念で治療をしていくのが本当の矯正・矯正歯科治療です。 歯科治療は医療の中でも、医師の考え方や感性・技術、医院の設備によって結果が大きく変わる業界です。 既に神経の治療がされていたり、見た目や適合の悪い大きな被せものが入っていれば話は別ですが、美しさを手に入れるためだけに必要以上に健康な歯を削り、神経を取ってまで無理やりセラミックの被せものをする必要はありません。 患者さまの望む最大の効果を合理的で正しい考え方と治療方法で結果を出すとともに、生涯歯の健康を維持しそこから全身の健康につなげていただけることが何より大切だと思っています。 患者さまのお悩みやご要望をお聞きし、最善の結果となるよう治療をご提案いたします。