マウスピース矯正(インビザライン)のIPRとは?

こんにちは。ピュアリオ歯科・矯正歯科スタッフです。

当院Instagramでマウスピース矯正(インビザライン)に関する質問を募集したところ、IPR(アイピーアール)についての質問をいただきました。

なぜ矯正をするときに歯を削るの?
健康な歯を削って大丈夫なの?
痛くないの?

等など、今回はマウスピース矯正(インビザライン)に欠かせない、IPR(アイピーアール)について、記事にいたしました。

マウスピース矯正(インビザライン)のIPRとは?

「IPR(アイピーアール)」は「InterProximal(隣接歯間の) Reduction(削合)」の略で、主に歯と歯の間を削る処置のことです。特にマウスピース矯正(インビザライン)ではよく使われる処置です。

削ると言っても、もちろん、歯の健康や寿命に影響の出ない安全な範囲内で行います。

歯の表面の「エナメル質」という層を、0.1mm単位で少しずつ削っていきます。ごくわずかですので、「削る」というよりも「やすりをかける」イメージに近いです。

実際に、やすりのような器具など、専用の器具を用途に応じて使い分けて処置します。

マウスピース矯正(インビザライン)におけるIPRの目的

IPRの主な目的は、歯列矯正において、歯を動かすためのスペースをつくることです。

歯列矯正では、歯を内側に引っ込めたり、重なって生えている歯をきれいに並べたりするためのスペースが必要になるケースが多いです。

従来のワイヤー矯正では、そのスペースをつくるために必要に応じて「抜歯」を行うことが一般的です。

しかし、スペースづくりのため、いわば見た目だけのために健康な歯を抜くということには、不安を感じられる患者様も多くいらっしゃいます。

IPRでは、歯と歯の間を削ることによって、従来は抜歯をして確保していた歯を動かすためのスペースをつくります。

歯1本あたりの削れる量はごくわずかですが、何本もの歯を少しずつ削ることで、歯を動かせるほどのスペースが確保できるのです。

そのため、健康な歯を抜かずに歯並びをきれいにすることが可能になります。

歯と歯の間にスペースをつくります

また、IPRの処置は、歯を並べるためのスペースづくり以外の目的でも行うことがあります。

・歯の大きさや形を整える目的

人それぞれ、口元がきれいに見える歯の大きさ・形のバランスがあります。IPRの技術を使えば、患者様に合わせて、その方にとって1番きれいに見える歯の形態に整えることが可能です。

・ブラックトライアングル(歯と歯の間の三角形のすき間)を解消する目的

歯列矯正で歯が動いたことや、加齢などで歯茎が下がってしまったことによって、歯と歯の間に三角形のすき間ができてしまうことがあります。これを「ブラックトライアングル」と呼びます。IPRの技術では、このブラックトライアングルを解消することもできます。

ブラックトライアングル

マウスピース矯正(インビザライン)でIPRは必ず必要?

先述の通り、IPRは歯を動かすためのスペースをつくることが主な目的です。

そのため、歯並びによっては、IPRでスペースをつくる必要がない場合もあります。

例えば、もともと歯と歯の間にすき間のあるいわゆる”すきっ歯”の方や、歯のガタつきが軽度な方などです。

ただ、歯並びにお悩みの方のほとんどは、なんらかのIPR処置が必要になることが多いです。当院の患者様では、全体の9割ほどの方にIPR処置をさせていただいています。

歯を削ることで虫歯になりやすくならない?

健康な歯を削ってしまったら、虫歯になりやすくなるのではないか?」とご心配される方がいらっしゃいますが、過去の研究結果や論文で、IPRが原因で虫歯になりやすくなったという報告はありません。

逆に、IPRで削られた歯の表面が再石灰化を起こすことによって、虫歯に対して3倍も強くなるという報告もあるほどです。

歯を削ることによって痛みや知覚過敏になることはない?

「歯を削るなんて痛そう」「歯を削ったら、知覚過敏(歯がしみる症状)になってしまうのではないか」とご心配される方もいらっしゃいます。

しかし、IPRによって痛みや知覚過敏になってしまうことはありませんので、ご安心ください。

歯は3つの層でできています。IPRでは、その一番表面側の「エナメル質」という層だけを、少しずつ削っていきます。

まず、痛みについてです。歯の中には神経が通っているので、虫歯の治療などで歯を削った場合、神経に届いて痛みを感じることがあります。虫歯は、エナメル質の内側にある「象牙質(ぞうげしつ)」という部分にまで進行していることも多く、象牙質まで歯を削ることになるため、さらにその内側にある「歯髄(しずい)」という歯の神経に響いて痛みを感じるのです。

それに対して、IPRで削るのはあくまで歯の表層であるエナメル質のみです。象牙質の近くまで削ることはないため、痛みは感じません。もちろん、処置の際には麻酔も必要ありません。

次に、知覚過敏についてです。知覚過敏とは、冷たいものや歯ブラシなどの刺激で歯がしみたり、痛みを感じたりする状態のことで、エナメル質の内側にある「象牙質(ぞうげしつ)」が露出することで起こります。IPRでは、あくまで歯の表面のエナメル質を削っているため、象牙質が露出することはないので、知覚過敏になる心配がないのです。

ただ、まれに歯を削る際に出る摩擦の熱などで歯がしみるという方もいらっしゃいます。もし処置中にしみることがあれば、すぐに手をあげて歯科医師にお知らせくださいね。

 マウスピース矯正(インビザライン)IPRは美しい歯並びのためにも重要な処置

実は、IPRでスペースをつくった場合と抜歯でスペースをつくった場合とでは、見た目の仕上がりも違ってきます。

そもそも、日本人は、もともと顎のサイズが小さく、それに対して生えてくる歯は大きめなので、歯がきれいに並ぶスペースが足りない方が多いです。

「顎の骨格がMサイズなのに、歯の大きさはLサイズ」というイメージです。口の中が定員オーバーで、ギュウギュウの状態なので、綺麗に並びきれずに、前歯が出てしまったり、歯がガタガタになってしまったりしやすいのです。

たとえると、10人がけのベンチにマツコ・デラックスさんが10人座っているイメージです!

そこで、歯を動かすスペースをつくるために“2人のマツコさんにどいてもらう”というのが抜歯です。2人どいてもらって、8人で座ってもらえば、綺麗に並んで座ることができますよね。

一方、IPRは”10人のマツコさんに、1人1人少しずつスリムになってもらおう”というものです。みんながスリムになれば、10人でも綺麗に並んで座ってもらうことができますね。

その方が、健康な歯を抜いてしまうリスクを避けられるだけでなく、実は見た目の仕上がりも美しくなります。

抜歯をして並ばせた場合、Mサイズの顎の骨格にLサイズのままの歯を並べることになるので、綺麗に並んで前歯の突出感やガタつきは治ったとしても、見た目があまり美しく仕上がらない場合があります。一方、IPRでは、歯の並びだけではなく、歯の大きさも適切なサイズに整えることができるのです。

マウスピース矯正(インビザライン)でIPRを行う2つのパターン

一般的にマウスピース矯正(インビザライン)を行うクリニックでは、IPRを「事前に治療計画に組み込む場合」と、「治療中に状況をみながら必要に応じて行う場合」と2つのパターンがあります。

マウスピース矯正(インビザライン)の場合には、治療計画の段階でどの部分にどのくらい歯を削る方が良いか、治療を担当する歯科医師が判断して戦略的に治療計画に反映させることができます。

そのため、治療計画を担当する歯科医師の経験値によって差が生じます。

 マウスピース矯正(インビザライン)のIPRは安全なのか?

IPRで健康に支障が出ることはまずありませんのでご安心ください。

歯は3つの層でできていますが、IPRで削るのは、その一番表面側の「エナメル質」という層だけです。

それも、0.1mm単位で必要最小限の量だけを削ります。

歯を削ることに不安を感じられる方がいらっしゃいますが、実は、歯の表面は、食べ物を噛むなどの日常生活の動作によっても少しずつすり減っているものなので、ほんの少し削るだけなら健康に影響はありません。

マウスピース矯正(インビザライン)におけるIPRの失敗例と回避策

IPRで必要以上に歯を削りすぎてしまうと、歯が動いても、削った分だけのスペースが埋まらなかったり、埋まるのに時間がかかってしまいます。そうなると、治療の途中でマウスピースの枚数を増やしたり、作り直さなければならなくなり、その分、治療期間が長引いてしまいます。

また、削りすぎてしまうことでエナメル質の内側の象牙質にまで届いてしまい、虫歯になりやすくなったり、痛みを感じたり、知覚過敏が起こってしまうこともあります。

当院のインビザライン矯正では、そういった失敗が起こらないように、治療前に必ず3D(3次元)のシミュレーションを用いて、どの歯にどれぐらいのIPRが必要かを綿密に分析し、必要最小限の量だけを削らせていただいています。

 マウスピース矯正(インビザライン)におけるIPRで歯を削る量は治療計画の段階で決まる

当院のマウスピース矯正(インビザライン)では、治療前に歯の動きを3D(3次元)でシミュレーションして、きめ細やかな治療計画を立てています。治療の明確なゴールをしっかりと決めているのです。

そのため、理想の歯並びにするにはどこにどの程度のすき間が必要か、を最初の段階で判断でき、IPRの処置の計画もしっかりと立てることができます。

(なお、ワイヤー矯正の場合、この工程がないため、治療前の段階では明確なゴールが決まっていない状態です。毎月のワイヤー交換のたびに、歯の動き具合を目視でチェックしながら、ワイヤーを曲げたり、IPR処置をしたりして進めていきます。)

3D分析による多角的な診断

ピュアリオと他院とのマウスピース矯正(インビザライン)の流れの違い

マウスピース矯正(インビザライン)では、治療スタート時に、1週間ごとの歯の動きをあらかじめシミュレーションします。

シミュレーションした歯の動きに合わせて、少しずつ(1枚につき約0.25mm程度)形の違うマウスピースを必要な枚数作成し、まとめてお渡しします。マウスピースは基本的には約1週間で1枚ずつ交換していきます。

ただ、実際に治療が進むにつれて、最初にシミュレーションしていた歯の動きと実際の歯の動きに誤差が出る場合があります。そうなると途中でマウスピースがフィットしなくなってきて、作り直さなくてはならなくなり、治療が長引いてしまいます。

最初から、最終的な完成形を目指してシミュレーションを組むと、30~80枚ほどのマウスピースが出来上がりますが、これを一気にお渡ししても、結局、途中で誤差が出て作り直しになるケースが多いです。

そこで当院では、マウスピース14枚ほどを1クールとして、数クールに分けて治療を進めていきます。1クールにかかる期間は、約14週間=3か月半前後です。1クール目が終わったら、再度検査をして、誤差が出ていないか確認し、2クール目のシミュレーションを組んで、2クール目のマウスピースを作成してお渡しします。

これによって、誤差の修正にかかる時間を最小限に抑え、効率よく治療を進めることができます。最終的な治療のトータル期間が、最初にまとめて30~80枚のマウスピースをお渡しする場合よりも短くできるのです。

IPRの計画も、最初から最終的な完成形に合わせて削るのではなく、誤差が出ることも想定して、1クール目、2クール目…とその都度、歯の動きを確認しながら少しずつ処置していきます。

マウスピース矯正(インビザライン)をご検討中の方で、これからクリニックでカウンセリングを受けられる予定の方は、以下2つのポイントをチェックされてみてください!

①平面(2次元)ではなく、3D(3次元)でシミュレーションを行っているかどうか

②理想の歯並びにするにはどこにどの程度のすき間が必要か、IPRの処置を治療計画に反映させているか

今回はIPR(アイピーアール)についてのご説明させていただきました。

この記事がマウスピース矯正(インビザライン)をご検討中の方の参考になれば幸いです。

監修歯科医師

インビザライン ブラックダイヤモンドドクター インビザライン・ジャパン株式会社(旧アライン・テクノロジー社)認定 医療法人社団ピュアスマイル 理事長

湊 寛明

私立 広島学院高等学校卒業 国立 九州大学歯学部卒業・歯学学位取得 九州大学病院研修医 終了 埼玉県 オレンジ歯科クリニック 栃木県 丹野歯科医院 山口県 みなと歯科医院 副院長 大手矯正歯科グループ 院長 ピュアリオ歯科・矯正歯科 田町三田院 設立 医療法人社団ピュアスマイル設立、理事長就任 

ご挨拶

誰もが憧れる白くて美しい歯で、個人の魅力を最大限に引き出し、 一生涯、歯の疾患で歯を一本も失うことのない未来を創る。

歯の見た目の美しさはもちろん、人が一生涯、長期的かつ健康に機能できるものとなるように、かみ合わせも力学的に良好な治療を考え、総合的な歯科の知識と予防的な概念で治療をしていくのが本当の矯正・矯正歯科治療です。 歯科治療は医療の中でも、医師の考え方や感性・技術、医院の設備によって結果が大きく変わる業界です。 既に神経の治療がされていたり、見た目や適合の悪い大きな被せものが入っていれば話は別ですが、美しさを手に入れるためだけに必要以上に健康な歯を削り、神経を取ってまで無理やりセラミックの被せものをする必要はありません。 患者さまの望む最大の効果を合理的で正しい考え方と治療方法で結果を出すとともに、生涯歯の健康を維持しそこから全身の健康につなげていただけることが何より大切だと思っています。 患者さまのお悩みやご要望をお聞きし、最善の結果となるよう治療をご提案いたします。

医療法人社団ピュアスマイル 理事長 湊 寛明