市販のマウスピースは価格が非常に安く、保険がきかない矯正治療と比べて、魅力に感じる方がいても不思議ではありません。しかし、市販のマウスピースは歯の保護を目的とした商品であり、矯正効果はありません。
矯正目的で使用すると深刻なトラブルが発生するリスクがあります。しかも矯正治療に関する専門的な知識と経験を有する歯科医のサポートもありません。
本記事では、市販のマウスピースの矯正効果や危険な理由、専門医との違いについて、解説します。
この記事でわかること
1. 市販のマウスピースによる出っ歯矯正の効果
出っ歯は、歯科矯正治療においてニーズが非常に高い悩みです。だからこそ、「市販のマウスピースで出っ歯を治したい」と考える方は多いのではないでしょうか。
結論から申し上げると、市販のマウスピースでは、出っ歯を治す効果はありません。専門知識と経験を持つ歯科医師に頼らず、ご自身で出っ歯を矯正しようしてはいけません。無理な力を加えることで、歯並びや噛み合わせの更なる悪化を引き起こすリスクがあります。
2. 市販マウスピースを使用した出っ歯矯正の危険性
インターネット上では、矯正マウスピースを宣伝する商品が存在します。ただし、市販のマウスピースを使用する矯正は避けましょう。しかも効果が期待できないだけでなく、歯にダメージを与えるリスクがあります。
ここでは、その危険性や安全な方法について解説します。
2-1. 市販のマウスピースは矯正目的ではない
まず基本的に押さえておくべきポイントとしては、市販のマウスピースは矯正目的の商品ではないということです。もともとマウスピースは、「歯の保護」を目的とする商品です。スポーツの際の衝撃に対しての保護であったり、歯ぎしりによる刺激を和らげるためのものです。
それらからもわかる通り、市販のマウスピースに矯正効果はないのです。つまり、市販のマウスピースと歯科矯正用マウスピースは、全くの別カテゴリーの商品です。
2-2. 矯正目的をうたっている場合も、矯正効果はない
中には、市販のマウスピースで矯正を目的とした商品とアピールしているものもあります。しかしこれらの商品には、歯科矯正の効果はありません。
例えば、「軽度の矯正を目的としています」と記載されている商品もあります。それは、一見矯正効果があるように見せかけているだけです。しかも歯科矯正は、法律上必ず歯科医の診断のもと作成すべきものです。
手軽に市販で購入できるものではないということを、覚えておいて下さい。
2-3. 歯科医師による定期的な診断がないため危険
歯科矯正は、高度な専門知識と豊富な経験を保有した歯科医師が行うものです。その歯科医師の診断なしに、市販のマウスピースで矯正をすることは非常にリスクがあります。
例えば短期間に強い力で歯を動かすと、歯茎や神経にダメージが生じる可能性があります。通常の歯科矯正では、歯に弱い力をゆっくりと加えていきます。
そして歯と歯槽骨の代謝を促しながら、同時に伸縮した歯根膜が元の厚さに戻る期間を計算し、歯を動かしていきます。こういった歯の生理メカニズムを理解した上での治療には、専門的な知識と高度なスキルが求められます。
そういった原理に基づかず、ご自身で市販のマウスピースで矯正をすることはとても危険な行為です。
3. 市販のマウスピースと専門の歯科医院の出っ歯矯正の違い
ここでは、市販のマウスピースと出っ歯矯正の違いについて、解説します。
3-1. 市販のマウスピースは歯の保護が目的の商品
市販のマウスピースと矯正用のマウスピースの一番の違いは、目的です。市販のマウスピースの目的は、「歯の保護」です。
例えば衝突による衝撃で歯が欠けたり、睡眠中の歯ぎしりを抑えるといった目的があります。そのような市販のマウスピースで、歯並び矯正のために使用することはできません。
例えば「美容効果があります」と記載されていた場合でも、歯列矯正は不可能です。歯列矯正を行いたい場合は、きちんと専門の歯科医師の診断を受け、ご自身の歯の状態に合った矯正用マウスピースを作成してもらいましょう。
3-2. 市販のマウスピースは自分で型取りをする
市販のマウスピース矯正は、まずマウスピース矯正キットをインターネット等で購入します。そして基本的に、ご自身で型取りをして作成します。
一方歯科医院のマウスピース矯正は、専門の歯科医師による診断をもとに治療計画を作成します。そしてそれに基づき、患者さん個人にフィットするオーダーメイドタイプのマウスピースが作成されます。また治療期間中に矯正の進捗をみながら、何回か作成されます。
3-3. 市販のマウスピースは医師のサポートがない
市販のマウスピースは、一般的にキットの買い切りで、そのまま使います。歯列矯正用ではないので、使用後の医師の診察は必要ありません。
一方歯科矯正用のマウスピースの場合は、一度作成したマウスピースを着用後、定期的に歯科医師が確認を行います。そして、患者さんの歯の矯正状態に合わせた微調整が行われます。
3-4. 市販のマウスピースは安価だが、あくまで歯ぎしり等の改善用
市販のマウスピースは安価で、ほとんどは数百~数千円の価格帯の商品です。なぜなら、その目的は歯の保護や歯ぎしりの防止のみだからです。
一方歯列矯正用のマウスピースは、個々人の歯の状態や歯科医師による矯正プランに応じて、オーダーメイドで作成されます。矯正治療という医療目的であるがゆえ、価格は市販より高価となります。
4. 出っ歯の矯正におすすめするマウスピース矯正【インビザライン】とは?
インビザラインは、世界的に一番評価されているマウスピース矯正システムです。歯科先進国アメリカのアライン・テクノロジー社が開発し、これまでに世界で1500万人を超える患者さんが治療を受けています。
透明で目立たず、薄く軽いために、日常生活の中で快適に使用できます。また全体矯正と部分矯正の両方に対応しており、どんな状態の歯並びでもほぼ対応が可能なのも大きな魅力です。
4-1. インビザラインGoとは
出っ歯の矯正治療で完全な仕上がりを希望される場合、「インビザラインGo」がおススメです。インビザラインGOは、出っ歯の治療に効果的な非抜歯治療法です。
治療期間は短く、一般的に半年から1年程度で完了します。ただし、大臼歯を動かすことができません。
そのため、咬合や歯列の決定には限定されることがあるので注意が必要です。
4-2. 格安マウスピース矯正の危ないポイント
格安マウスピース矯正は、部分矯正を短期間で安くできます。しかし、注意すべきポイントもあります。ここでは、それらについて解説します。
4-2-1. 軽度の出っ歯しか対応できない
格安マウスピース矯正は、軽度の出っ歯にしか対応できません。つまり、重度の出っ歯治療には、対応できません。
例えば前歯部分だけが気になっていたとしても、実はその原因が骨格や全体的な歯並びにあることがあります。つまり、出っ歯矯正治療はただ前歯部分を引っ込めるだけの治療ではないのです。全体の歯並びや、噛み合わせが連動する複雑な治療であることを理解する必要があります。
4-2-2. 奥歯を動かせない、噛み合わせを治せない
格安マウスピース矯正では、上下合わせて前歯12本のみにしか対応できません。そのため、奥歯を動かすことができません。
つまり奥歯を動かせず、全体の噛み合わせや歯並びの悪さが軽度の場合以外には対応できません。軽度の出っ歯や軽度の八重歯といった問題は改善できますが、抜歯などが必要な出っ歯矯正には対応していません。
4-2-3. 治療前に費用や終了時期がわからない
格安マウスピース矯正は、治療前に費用や治療終了時期が定まらない側面があります。例えば「インビザライン」「インビザラインGo」の場合、治療前に3Dの動画で治療の開始からゴールまで歯がどのように動くかを確認できます。その際に、治療費用や治療期間が提示されます。
一方格安マウスピース矯正は、診察のたびに歯科医師と相談しながら、次のマウスピースを製作するかどうかを決めていくスタイルです。つまり、費用と治療期間は医師の判断によるところが大きいのです。
5. マウスピース(インビザライン)による出っ歯矯正の費用と期間
ここでは、インビザラインによる出っ歯矯正の費用と期間について、解説します。
5-1. インビザラインの出っ歯矯正の費用
出っ歯矯正費用相場は、インビザラインで50万円~100万円です。
またインビザラインGoで、30万円~80万円です。
出っ歯矯正費用の内訳としては、カウンセリング料や検査料、診断料などがあります。検査料とは、歯やその周辺の骨格のレントゲン撮影料やCT撮影料です。
5-2. インビザラインの出っ歯矯正の期間
出っ歯矯正の期間は、インビザラインで6ヶ月~2年半程度です。またインビザラインGoで、3ヶ月~6ヶ月程度です。
部分矯正は、前歯部分をターゲットにした矯正です。矯正する歯の本数が少ないため、短い期間で矯正が完了します。
6. 市販のマウスピースによる出っ歯の矯正についてのまとめ
市販のマウスピースには、出っ歯を治す効果はありませんので注意する必要がります。そもそも市販のマウスピースは、歯の保護や歯ぎしり抑制を目的とした商品です。
矯正用のマウスピースとは、名前は同じですが、全く別の商品と理解しましょう。また矯正効果があるような表記を誤解して、ご自身で歯に力を加えたりしないようにしましょう。
歯は、一生ものです。歯の治療については、高度な専門知識と経験を持つ歯科医師に委ねましょう。
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監修歯科医師
湊 寛明
私立 広島学院高等学校卒業 国立 九州大学歯学部卒業・歯学学位取得 九州大学病院研修医 終了 埼玉県 オレンジ歯科クリニック 栃木県 丹野歯科医院 山口県 みなと歯科医院 副院長 大手矯正歯科グループ 院長 ピュアリオ歯科・矯正歯科 田町三田院 設立 医療法人社団ピュアスマイル設立、理事長就任
ご挨拶
誰もが憧れる白くて美しい歯で、個人の魅力を最大限に引き出し、 一生涯、歯の疾患で歯を一本も失うことのない未来を創る。
歯の見た目の美しさはもちろん、人が一生涯、長期的かつ健康に機能できるものとなるように、かみ合わせも力学的に良好な治療を考え、総合的な歯科の知識と予防的な概念で治療をしていくのが本当の矯正・矯正歯科治療です。 歯科治療は医療の中でも、医師の考え方や感性・技術、医院の設備によって結果が大きく変わる業界です。 既に神経の治療がされていたり、見た目や適合の悪い大きな被せものが入っていれば話は別ですが、美しさを手に入れるためだけに必要以上に健康な歯を削り、神経を取ってまで無理やりセラミックの被せものをする必要はありません。 患者さまの望む最大の効果を合理的で正しい考え方と治療方法で結果を出すとともに、生涯歯の健康を維持しそこから全身の健康につなげていただけることが何より大切だと思っています。 患者さまのお悩みやご要望をお聞きし、最善の結果となるよう治療をご提案いたします。