矯正後の後戻りの確率とその原因とは?防ぐ方法や再治療についても解説

歯科矯正後の後戻りの確率は、どれぐらいあるのでしょうか。長い歯列矯正期間を経て、保定期間に入っても後戻りしてしまうとそれまでの努力が無駄になるだけに、これは切実な問題です。

また後戻りは、どんな要因で起こるのでしょうか。そういった後戻りとその原因の相関関係を理解すると、美しい口元を実現する大きなヒントになります。

当記事では、矯正後の後戻りの確率や原因だけでなく、具体的に防ぐ方法や再治療についても解説しています。ぜひ自分にピッタリなリテーナーと仲良く付き合いながら、美しい口元を実現して下さい。

矯正後の後戻りの確率はどのくらい?

歯列矯正治療には、必ず「保定期間」が設けられています。その理由は、移動したキレイな歯並びになった歯をその位置に固定し、歯の後戻りを防ぐためです。その期間は長く、必要な期間は約1~3年といわれています。

そこで気になるのは、「矯正で後戻りする確率」です。結論を申し上げると、マウスピースやマルチブラケットを用いて歯を移動した後、保定期間にリテーナーを装着時間通りに装着しないと、後戻りする確率はほぼ100%です。

後戻りの原因のほとんどは、「装着時間不足」です。多くの方は、矯正治療直後はリテーナーを毎日しっかり装着します。しかし時間が経つとどうしても意識が薄くなり、後戻りが発生しやすくなってしまうのです。

矯正後に後戻りする原因は?

実は誰にでも、歯列矯正後に歯並びが元に戻る「後戻り」は起こりうる現象です。矯正治療で歯を動かしても、ヒトの脳や細胞は「もともと歯があった場所」を覚えています。それほど、歯が元の位置に戻ろうとする力は強いといえます。ここでは、歯が後戻りしてしまう原因と対策のポイント、歯の変化について解説します。ぜひ後戻りについて正しい知識を身に付けて頂き、歯列矯正治療の効果を最大限にしましょう。

リテーナーの装着時間不足

後戻りの1位の原因が、リテーナー(保定装置)装着時間の不足です。 矯正治療でキレイに整った歯並びは、矯正治療後6ヶ月間が最も後戻りしやすいといわれています。そのため、1日20時間以上のリテーナー装着が推奨されています。

しかし治療が終わってしばらく経つと、どうしても面倒になって着けるのをやめたり、忘れてしまう患者さんが出てきます。その結果、装着時間が守られなくなり、歯の後戻りが進行してしまうのです。

例えばリテーナーを装着すべき保定期間は約1年~3年間で、多くは矯正治療と同じ期間が必要になります。なので、ご自身の判断で装着を止めてはいけません。歯科医の経過観察を受け、アドバイスに従って少しずつ装着時間を減らすのがおススメです。

日常習慣

日常的に無意識に行っている生活習慣で、歯の後戻りが進んでしまうこともあります。代表的な例としては、「頬杖」「うつぶせ寝」「口呼吸」「舌の癖」などが挙げられます。意外と無視できないのは、これらのクセで加わる力は矯正装置の数倍はあると言われていることです。

例えば、頬杖をついたり横向きに寝るなどのクセがあると、顎に圧力がかかり後戻りしやすくなります。また頬杖の場合は、前歯が前へ押し出されてしまうので、出っ歯になるリスクがあります。

口まわりのクセ

日常生活における口周りのクセも、実は後戻りの原因となります。 具体的には、「食べる時に強く噛んでしまう」「舌で歯を押し出す」「歯ぎしり」といったクセです。

例えば強く噛んでしまうクセの場合、矯正直後の不安定な歯並びが強い方向に引きずられます。その結果、噛み合わせが乱れてしまいます。また舌で歯を押し出すクセの場合、前歯に圧力がかかり、歯の間に隙間ができやすくなります。

このようなクセによる後戻りを防ぐ効果は、リテーナーにあります。ただし、リテーナーを外している時間にクセを続けると少しずつ歯に力がかかり、後戻りする可能性があります。

リテーナーの変形や破損

リテーナーを使用していても、リテーナー自体が変形や破損していると、後戻りする可能性が高くなります。

ちなみにリテーナーが変形したり、破損するにはいつくかの要因が考えられます。

着け外しを頻繁にしている

保定期間中、リテーナーの着け外しを頻繁にしていると、どうしても変形しやすくなります。食事や歯磨きの時はどうしても外す必要がありますが、その時は奥歯側からゆっくり外すようにしましょう。

洗う時間に強い力を加える

リテーナーは、定期的なお手入れが必要です。例えば、洗浄時に歯ブラシで優しくこするぐらいであれば問題ありません。ただし強くこすったり、強く抑えながら磨いた場合、変形や割れる原因になります。

専用ケースでの保管をしていない

専用ケースでリテーナーを保管していない場合、外出時でのトラブルの要因になるケースが多いです。例えば、上着のポケットに入れたり、カバンに入れたりして、他のものとぶつかったり、押しつぶされるリスクもあります。せっかく矯正治療を終え保定期間に入っても、不具合もあるリテーナーでは本来の機能を果たすことができなくなります。

後戻りの確率を下げる、防ぐ方法

歯は、一生変化し続けています。眠っている間の歯ぎしりや、歯の食いしばりクセなどは、その人の歯並びに少なからず影響を与えると言われています。では、矯正治療後の後戻りの確率を最小限に抑えて、キレイな歯並びをキープするにはどうしたらいいのでしょうか。以下に、ポイントを解説します。

リテーナー(保定装置)を正しく使う

歯の後戻りの原因のトップは、「リテーナーの使用を怠っていた」です。リテーナーは、時間をかけて整えた歯並びを維持していくためには、絶対欠かせない装置です。

後戻りの確率を上げるリテーナーの使い方

矯正治療終了後間もないうちは、まだ歯の周辺組織が不安定で、歯が動きやすい状態です。そのため、歯列や咬合がなかなか安定せず、どうしても後戻りが生じやすくなっています。つまり、後戻りを防止するためには、リテーナーはとても重要な機能を果たしています。一般的に治療終了後1年ほどは、少なくとも1日20時間以上のリテーナー装着が必要といわれています。

継続的な装着で歯並びを維持する

リテーナーの使用期間は、個人差があります。一般的には、矯正治療期間+1~3年です。問題は、後戻りのしやすさとして、「元の歯並び」「かみ合わせ」「お口の周りの筋肉状態」「クセ」「歯ぎしり」「頬杖」「うつぶせ寝」など、様々な要因があることです。更に加齢によって、状況は常に変化します。

そうした中で一番大切なことは、「リテーナーを継続的に装着する」ことです。そうすることで、ご自身の口の中の変化に、素早く気づきやすくなります。万が一後戻りが生じても、調整が少しで済みます。また「リテーナーがきつく感じる」「合わなくなってきた」と変化を感じたら、早めに歯科医に相談しましょう。そうすることで、後戻りする確率を下げることができます。

自分のクセを治す

先ほども指摘しましたが、毎日無意識のうちに行っているクセは、歯並びに大きな影響を与えています。その力は矯正装置の数倍といわれており、キレイな口元を実現するためには無視できません。ここでは歯並びに影響がある治すべきクセを、以下に記します。

①頬杖
②うつぶせ寝
③口呼吸
④食べる時に強く噛む
⑤舌で歯を押し出す
⑥歯ぎしり
⑦指しゃぶり
⑧爪を噛む
⑨片側のみでものを噛む
⑩猫背など悪い姿勢

舌の癖や口呼吸は、口腔筋機能療法といったトレーニングで改善する方法もあります。上記の一覧で心当たりがあれば、早く対処した方が良いでしょう。リテーナーの装着を励行するだけでなく、こういった積み重ねが、美しい歯並びのための第一歩です。

歯周病を予防する

歯周病は、歯についた磨き残し中の細菌による感染症です。その細菌感染だけでなく、疾患の発症や進行に影響を与える様々な因子や生活習慣があります。歯周病は進行すると、歯の周囲の骨を溶かしていきます。その結果歯は傾き、徐々に歯並びが崩れていきます。

矯正終了後、歯周病にならないよう十分に気を付ける必要があります。そのためにはセルフケアだけでなく、定期検診でチェックすることも大切です。

矯正後の後戻りによって再治療が必要となるケースとは?

せっかく歯列矯正治療を完了したものの、いろんな原因で保定期間に後戻りしてしまうケースがあります。そういった時に再矯正した方がいいのかどうか、迷ってしまう方も多いと思います。ここでは、再治療が必要なケースについて、解説します。

本人がコンプレックスを感じる

後戻りの結果、外見的に気になり、コンプレックスになる場合は、再治療をした方がいいでしょう。例えば「前歯の隙間が目立つ」「徐々に出っ歯になってきた」といった状態になると、矯正した意味がなくなってしまいます。再治療の場合、再度歯並びが乱れないように、リテーナーの装着時間をしっかり守るようにしましょう。

リテーナーがはめられなくなった

大きく後戻りをした結果、リテーナーがはめられなくなった場合も、再治療をした方がいいでしょう。例えば少しの後戻りでリテーナーがはめられる状態の場合、装着時間をしっかり守ることで治る可能性はあります。

一方、リテーナーがはめられなくなるほど後戻りした場合、思うように噛めないなどの問題が出る可能性があります。そのような時は、歯科医院に再治療の相談をしてみましょう。

まとめ:矯正後の後戻りの確率と防ぐ方法

歯科矯正後の後戻りの確率は、リテーナーを装着しないとほぼ100%です。現実には、「リテーナーしているのに後戻りした」という事例もあります。

それほど歯というものは、元の位置に戻ろうとする力が強いということを、認識する必要があります。それは、歯列矯正治療期間と同じぐらいの保定期間を必要とする事実からも、おわかり頂けると思います。

破損していないリテーナーでの装着時間を守ることは大前提として、それ以外にもクセや生活習慣といった要因が歯並びに大きな影響を持っていることはあまり知られていません。

だからこそ、自分にピッタリなリテーナーと仲良く付き合いながら、同時に歯並びに悪影響がある要因を減らしていくことが、美しい口元を実現する王道だといえます。

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監修歯科医師


6年連続 インビザライン ブラック・ダイヤモンド認定
医療法人社団ピュアスマイル 理事長 湊寛明

経歴

私立 広島学院高等学校卒業 国立 九州大学歯学部卒業・歯学学位取得 九州大学病院研修医 終了 埼玉県 オレンジ歯科クリニック 栃木県 丹野歯科医院 山口県 みなと歯科医院 副院長 大手矯正歯科グループ 院長 ピュアリオ歯科・矯正歯科 田町三田院 設立 医療法人社団ピュアスマイル設立、理事長就任 

ご挨拶

誰もが憧れる白くて美しい歯で、個人の魅力を最大限に引き出し、 一生涯、歯の疾患で歯を一本も失うことのない未来を創る。

歯の見た目の美しさはもちろん、人が一生涯、長期的かつ健康に機能できるものとなるように、かみ合わせも力学的に良好な治療を考え、総合的な歯科の知識と予防的な概念で治療をしていくのが本当の矯正・矯正歯科治療です。 歯科治療は医療の中でも、医師の考え方や感性・技術、医院の設備によって結果が大きく変わる業界です。 既に神経の治療がされていたり、見た目や適合の悪い大きな被せものが入っていれば話は別ですが、美しさを手に入れるためだけに必要以上に健康な歯を削り、神経を取ってまで無理やりセラミックの被せものをする必要はありません。 患者さまの望む最大の効果を合理的で正しい考え方と治療方法で結果を出すとともに、生涯歯の健康を維持しそこから全身の健康につなげていただけることが何より大切だと思っています。 患者さまのお悩みやご要望をお聞きし、最善の結果となるよう治療をご提案いたします。