リテーナーの種類と保定期間やお手入れ・トラブル・費用まで解説

矯正治療が終わった後、患者さんはリテーナーという保定装置をつける必要があります。リテーナーは、後戻りを防ぎ、キレイになった歯並びを定着させるために必要な装置です。本記事では、リテーナーにはどんな種類があり、それぞれどんな特徴があるのかを詳しく解説します。またメンテナンス方法や破損時の費用や期間もご紹介します。保定期間において、リテーナーと上手に付き合うことが必要不可欠です。特に最初の1年は1日20時間以上装着する必要があります。自分にぴったりなリテーナーを見つけて、最高の歯並びを実現して下さい。

1. リテーナー(保定装置)とは?その目的について

まず最初にリテーナーとは何か、またなぜその装着が歯列矯正治療において大切なのかを解説します。

1-1. リテーナーとは

リテーナーとは、矯正装置を外した後の歯並びが後戻りしないようにする保定装置のことです。2種類あり、取り外しできるものとできないものがあります。一般的には取り外しできるものを使用しますが、患者さんの歯の状態によっては、固定式の保定装置が望ましい場合もあります。

また取り外しできるリテーナーも、前歯だけのタイプと歯を全体的に包むタイプがあります。取り外しできるタイプのリテーナーを使用する場合でも、初めの1年の間は後戻りの力が強く働くので、歯磨きや食事の時以外は外さないようにする必要があります。

その後装着してから1年以上経つと、徐々にリテーナーの装着頻度を減らしていけます。例えば1年目は一日中着けて、2年目は夜間の就寝時につけるといったイメージです。ただし患者さんの状態によって異なるので、基本的には歯科医の指示に従いましょう。

1-2. リテーナーが大切な理由とは

リテーナーは、歯並びの後戻りを防止する装置です。では、なぜ後戻りが起きるのでしょうか。矯正装置で移動させた歯の周囲組織は、作り替えが発生します。そして作り替えが完全に終了するまでは時間がかかり、その間歯は元の場所に戻ろうとします。矯正治療後の後戻りといわれるこの力は、新しい歯の周辺組織が形成されるまで、1年ほど強く働きます。

そのため、矯正治療後2年以上はリテーナーを装着する必要があります。例えばリテーナーの装着をサボってしまったり、使い方を間違うと治療前の位置に戻るリスクがあります。戻ってしまった歯並びを自力で治すことは、お勧めできません。そういう意味でも、リテーナーは、矯正治療後の歯並びを保つためにとても重要です。最後まで慎重に保定を完了させ、矯正治療の効果を最大限に高める必要があります。

2. リテーナーの種類について

ここでは、リテーナーの種類について解説します。

2-1. ベッグタイプリテーナー

一般的によく使われるリテーナーのタイプです。歯の全体をワイヤーで囲むタイプで、取り外しができます。歯の中心あたりにワイヤーが来るので、口を開いた時にワイヤーが見えます。歯列全体を取り囲み、ワイヤーで締め付けることができるので、全体の歯並びを固定できます。抜歯を伴う歯列矯正の治療後に、よく使われるリテーナーです。

2-2. ホーレータイプリテーナー

ホーレータイプリテーナーも、よく使われるタイプです。ベッグタイプリテーナーと同じく、表側をワイヤーで、裏側をプラスチックで取り囲み、保定するリテーナーです。ベッグタイプリテーナーと異なる点は、後戻りが起こりやすい前歯に限定してワイヤーが通ります。前歯の表面だけにワイヤーが通っており、ベッグタイプより見えるワイヤーの範囲は少ないという特徴があります。取り外しが可能で、より目立ちにくいワイヤーが白色や透明タイプもあります。

2-3. スプリングリテーナー

後戻りしやすい下顎前歯のみの部分的なリテーナーで、コンパクトで使用感が良いのが特徴です。前歯部分を、プラスチックで覆っています。そして、犬歯もしくは第一小臼歯まで延長したワイヤーで、装置全体を歯列に保持します。違和感が小さく、部分矯正の保定装置として用いられます。

2-4. トゥースポジショナー

トゥースポジショナー(T.P.)は、自分で取り外しができ、シリコンでできているリテーナーです。基本的には、軽度症例を対象としています。また保定装置としてだけでなく、ワイヤー矯正治療後の軽度の歯列の乱れを修正できます。多くの矯正装置は太い針金でできていますが、高分子弾性材料でできている柔らかいマウスピース形態は特殊な矯正装置といえます。

2-5. インビジブルリテーナー

透明な薄いシートでできている、歯列全体を覆うリテーナーです。装着していても目立たないため、日中の使用に向いています。ただし噛む面を装置が覆うため、噛みしめる力によって穴が空いたり、割れることがあります。

2-6. フィックスリテーナー

フィックスリテーナーは、個々の患者に合わせて作製されます。前歯の裏側に使用され、歯に直接接着する保定方法です。一般的に、金属製もしくは透明でポリカーボネートのようなプラスチックで作られています。フィックスリテーナーの大きな特徴は、咬合力が均等に分散され、咬合の不調和を防ぐ役割を果たします。そのため、咬合力が正常に配分され、歯や顎関節の負担が軽減されます。こういった点が、矯正治療後の選択肢として推奨される理由になっています。

2-7. マウスピースタイプリテーナー

透明のマウスピースなので、装着していることがほとんどわらないタイプのリテーナーです。ただし、上下の歯同士が触れ合わないので、噛み合わせの調整はできません。噛み合わせを安定させたい症例には、不向きなタイプです。また薄いシート状の素材でできており、破損しやすいという側面あります。硬いものを噛んだり、就寝中の歯ぎしりのクセがある方は、注意しましょう。

2-8. リンガルリテーナー

歯の裏側に、金属製のワイヤーを装着する固定式のリテーナーです。固定式なので、取り外しができません。大きな特徴は、リテーナーが舌側にあるので、外見上はほとんど目立ちません。ただし、固定式なので歯磨きのときも外せません。その分、虫歯や歯周病のリスクがあります。

3. リテーナーの種類と費用について

リテーナーの費用は、歯科医院やクリニックによって異なります。例えば、矯正費用に最初から含まれている場合もあれば、別途かかる場合もあります。別途で費用がかかる場合、一般的には上下含めて6万円前後です。

歯列矯正治療を行う前に、リテーナー費用が含まれているのか、別途費用がかかるのかをしっかり確認しましょう。また万が一リテーナーが破損して作り直す場合、費用がどうなるのかをチェックしておきましょう。

4. リテーナーの正しいお手入れ方法

4-1. リテーナーの取り外し方法について

リテーナーの正しい着脱方法は、「外すときは奥歯から、つけるときは前歯から」です。例えば前歯から外してしまう場合、前歯の部分に力が入り、破損の原因になります。また着ける時は、しっかり前歯から奥歯の方へ押していくように装着しましょう。

この時、前歯がピッタリハマらないと全体が浮いてしまい、違和感の原因になります。

リテーナーを口の中に入れて嚙みこんではめる方法も、破損の原因になります。必ず指で口にはめこむように心がけましょう。

4-2. リテーナーの種類とお手入れ方法について

基本的には歯ブラシを使ったブラッシングですが、リテーナーの種類によってお手入れ方法が異なります。ここでは、種類ごとに解説します。

4-2-1. マウスピース型リテーナー

毎日歯ブラシでブラッシングし、週に1~2回リテーナー用の洗浄液で洗浄します。

洗浄液の使い方を、以下に記します。

①コップに水もしくはぬるま湯をいれる(※熱湯は避けて下さい)

②最初洗浄液、次にリテーナーの順で、コップに入れる

③一定時間つけておく

④リテーナーを取り出して、水でよくすすぐ

4-2-2. プレート型リテーナー

プレート型のリテーナーも、マウスピース型のリテーナーと同じです。毎日歯ブラシを使ってブラッシングし、週に1~2回リテーナー用の洗浄液で洗浄します。ただし、酸性の洗浄液は避けましょう。酸性の洗浄液を使用すると、リテーナーの金属部分が錆びてしまいます。

4-2-3. ワイヤー型リテーナー

ワイヤー型のリテーナーも、毎日のブラッシングが必要です。ワイヤー型は、ワイヤーの周辺に食べ残しや歯石がたまりやすいという特徴があります。そのため、ブラッシングだけでは汚れが取り切れない可能性があります。清潔さを保つために、歯科クリニックで定期的にクリーニングを受けることをおススメします。

5. リテーナーのトラブル対応方法

リテーナーと呼ばれる保定装置を長期間使用すると、割れたり、亀裂が入るなどの破損が起こる可能性があります。ここでは、保定装置が破損した際の対処法について解説していきます。

5-1. リテーナーが壊れる理由とは

5-1-1. 保管方法の不備

リテーナーが壊れる一番の理由は、保管の仕方の不備です。リテーナーを外した時に、テーブルに置いて落として踏んだり、カバンやポケットに入れて変形してするケースも多いです。また、着脱時に破損してしまうケースもあります。

5-1-2. リテーナーの劣化

リテーナーの使用期間は矯正治療と同じくらい長く、装置が劣化することもあります。劣化が原因で穴が開いたり、亀裂が入るリスクがあります。また何回も着け外しを行うことで、破損することもあります。あと、歯が噛み合う部分が摩耗し、傷や穴ができる可能性があります。この場合穴が大きくなると、リテーナーを使用できなくなります。

5-2. リテーナーの作り直しにかかる費用と期間

5-2-1. 作り直しの費用

リテーナーの作り直しの費用相場は、5,000円~50,000円です。ただし種類やクリニックによって、その費用は異なります。タイプ別の費用相場としては、マウスピースタイプは比較的安価です。フィックスタイプのリテーナーは、高額になる傾向があります。リテーナーの破損時の費用については、事前に歯科医院やクリニックに確認しておくと安心です。

5-2-2. 作り直しの期間

リテーナーの作り直し期間も、使用している装置によって異なります。一般的には、2週間から1ヶ月前後かかります。作り直し期間はリテーナーを装着できないので、後戻りを防ぐために歯科医に応急処置を依頼することになります。

6. リテーナーの種類まとめ

矯正治療が終わった後も、患者さんはリテーナーという装置をつける必要があります。リテーナーは、矯正で歯並びを整えた後、後戻りを防ぎ、定着させるための必要な装置です。基本的には患者さんの希望も取り入れて、歯科医師がリテーナーを選んでくれます。

そこでリテーナーにはどんな種類があり、どんな特徴があるのかを把握しておく必要があります。またそのメンテナンス方法や破損時の費用についても、事前に理解しておくと安心です。

リテーナーと上手に付き合うことが、歯列矯正治療を成功させるためには、必要不可欠といえるでしょう。

監修歯科医師

インビザライン ブラックダイヤモンドドクター インビザライン・ジャパン株式会社(旧アライン・テクノロジー社)認定 医療法人社団ピュアスマイル 理事長

湊 寛明

私立 広島学院高等学校卒業 国立 九州大学歯学部卒業・歯学学位取得 九州大学病院研修医 終了 埼玉県 オレンジ歯科クリニック 栃木県 丹野歯科医院 山口県 みなと歯科医院 副院長 大手矯正歯科グループ 院長 ピュアリオ歯科・矯正歯科 田町三田院 設立 医療法人社団ピュアスマイル設立、理事長就任 

ご挨拶

誰もが憧れる白くて美しい歯で、個人の魅力を最大限に引き出し、 一生涯、歯の疾患で歯を一本も失うことのない未来を創る。

歯の見た目の美しさはもちろん、人が一生涯、長期的かつ健康に機能できるものとなるように、かみ合わせも力学的に良好な治療を考え、総合的な歯科の知識と予防的な概念で治療をしていくのが本当の矯正・矯正歯科治療です。 歯科治療は医療の中でも、医師の考え方や感性・技術、医院の設備によって結果が大きく変わる業界です。 既に神経の治療がされていたり、見た目や適合の悪い大きな被せものが入っていれば話は別ですが、美しさを手に入れるためだけに必要以上に健康な歯を削り、神経を取ってまで無理やりセラミックの被せものをする必要はありません。 患者さまの望む最大の効果を合理的で正しい考え方と治療方法で結果を出すとともに、生涯歯の健康を維持しそこから全身の健康につなげていただけることが何より大切だと思っています。 患者さまのお悩みやご要望をお聞きし、最善の結果となるよう治療をご提案いたします。

医療法人社団ピュアスマイル 理事長 湊 寛明