リテーナーの種類・保定期間・費用|後戻りを防ぐ保定装置の全知識

矯正治療で歯並びが整ったあと、その状態を保つために欠かせないのがリテーナー(保定装置)です。

「せっかく矯正したのに、後戻りしてしまうのでは」という不安をお持ちの方は少なくありません。実際、矯正装置を外した直後の歯は元の位置に戻ろうとする力が働きます。これはワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも変わりません。

この記事では、リテーナーの種類ごとの特徴、装着すべき期間と時間、日々のお手入れ、破損したときの対応までを一通り解説します。あわせて、当院が採用している保定方針についてもお伝えします。

1. リテーナー(保定装置)とは

後戻りはなぜ起こるのか?

1-1. リテーナーの役割

リテーナーとは、矯正装置を外したあとに歯並びが後戻りしないよう、位置を保つための装置です。

大きく分けて、自分で取り外せるタイプと、歯に接着して外せないタイプの2系統があります。一般的には取り外しできるタイプが使われますが、歯の状態によっては固定式が適している場合もあります。

取り外しできるタイプにも、前歯だけを覆うものと歯列全体を包むものがあります。

1-2. なぜ後戻りが起こるのか

矯正では、歯に力をかけることで歯を動かします。このとき歯の根の周囲にある歯槽骨(しそうこつ)が、吸収と形成を繰り返しながら歯の移動を可能にしています。

治療が終わったばかりの時期は、この歯槽骨がまだ安定しておらず、歯が動きやすい状態にあります。矯正装置を外しただけで何もしなければ、歯は元の位置へ戻ろうとします。

周囲組織の作り替えが完了するまでには時間がかかり、後戻りの力は治療後およそ1年間、強く働きます。そのため、矯正治療後2年以上はリテーナーの装着が必要とされています。

また、無意識に舌で歯を押す、頬杖をつくといった癖がもともとの歯並びに影響していた場合、その癖が続く限り後戻りしやすくなります。

2. リテーナーの種類と特徴

リテーナーの8種類

リテーナーは大きく「取り外しできるタイプ」と「固定式タイプ」に分かれ、そのなかでさらに複数の種類があります。

取り外しできるタイプ

2-1. ベッグタイプリテーナー

歯列全体をワイヤーで囲む、広く使われているタイプです。歯の中央あたりにワイヤーが通るため、口を開けるとワイヤーが見えます。歯列全体を締め付けて固定できるため、抜歯を伴う矯正治療後によく使われます。

2-2. ホーレータイプリテーナー

表側をワイヤー、裏側をプラスチックで支える構造です。ベッグタイプとの違いは、後戻りが起こりやすい前歯に限定してワイヤーが通る点で、見えるワイヤーの範囲が少なくなります。白色や透明のワイヤーを選べる場合もあります。

2-3. スプリングリテーナー

後戻りしやすい下の前歯だけを部分的に保定する、コンパクトなタイプです。前歯部分をプラスチックで覆い、犬歯または第一小臼歯まで伸ばしたワイヤーで装置全体を保持します。違和感が小さく、部分矯正後の保定に用いられます。

2-4. トゥースポジショナー

シリコン製で取り外しができるリテーナーです。軽度の症例が対象で、保定だけでなくワイヤー矯正後のわずかな乱れを整える目的でも使われます。柔らかい素材でできている点が、他の装置と大きく異なります。

2-5. インビジブルリテーナー(クリアリテーナー)

透明な薄いシートで歯列全体を覆うタイプです。装着していても目立たないため日中の使用に向いています。ただし噛む面まで覆う構造のため、噛みしめる力で穴が開いたり割れたりすることがあります。

2-6. マウスピースタイプリテーナー

透明なマウスピース型で、装着していることがほとんど分からないタイプです。上下の歯が直接触れ合わないため噛み合わせの微調整には向きませんが、目立たず、取り外して歯のケアができます。薄いシート状の素材のため、硬いものを噛む方や就寝中に歯ぎしりの癖がある方は破損に注意が必要です。

固定式タイプ

2-7. フィックスリテーナー

主に下の前歯3本程度の裏側に細いワイヤーを接着する、取り外しできないタイプです。上顎に使う場合もあります。歯の裏側にあるため目立ちませんが、歯磨きの際も外せないため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。定期的な歯科でのクリーニングが欠かせません。

2-8. リンガルリテーナー

歯の裏側(舌側)に金属製のワイヤーを装着する固定式タイプです。外見上はほとんど目立ちませんが、フィックスリテーナーと同様、清掃性の面で注意が必要です。

2-9. 当院がマウスピースタイプを採用している理由

当院では、保定装置としてマウスピースタイプを採用しています。理由は3つあります。

目立たないこと。 透明なため、装着していることが周囲に分かりません。

清潔を保ちやすいこと。 取り外せるため、歯のケアを普段どおり行えます。固定式では難しい点です。

患者様が既に慣れている方法であること。 当院はマウスピース矯正を専門としているため、治療中にマウスピースの着脱が習慣になっています。保定に移行しても新しい手間が増えず、無理なく続けていただけます。

保定は年単位で続くものです。続けられる方法であることが、装置の性能と同じくらい重要だと考えています。

3. リテーナーはいつまで使う?一生必要なのか

装着期間と1日に装着時間

3-1. 保定期間の目安

保定装置を装着して過ごす期間を保定期間といいます。一般的には、矯正治療が完了してから2年程度が目安とされています。

これは、治療直後は歯槽骨が安定しておらず歯が動きやすいためです。目安として、歯を動かすのにかかった期間と同程度の保定期間が必要になります。

3-2. 1日の装着時間について(当院の方針)

保定期間中、1日にどれくらい装着するかは、後戻りを防げるかどうかを大きく左右します。

当院では、矯正治療中のマウスピースと同様に、1日20時間以上の装着を推奨しています。 食事と歯磨きのとき以外は装着している状態です。

歯科医院によっては「1日3〜6時間程度で良い」「就寝中だけで良い」と説明される場合もあります。ただ、装着時間が足りずに後戻りしてしまったという相談を受けることが少なくありません。

後戻りのしやすさには個人差があります。舌で歯を押す、頬杖をつくといった癖がある方は戻りやすく、一方であまり装着していなくてもほとんど戻らない方もまれにいらっしゃいます。しかし全体としては、戻りやすい方のほうが多いのが実情です。

矯正にかけた時間と費用を無駄にしないために、当院では十分な装着時間をお願いしています。

3-3. 保定期間が終わったあと

保定期間を終えたあとも、歯は加齢によって少しずつ動きます。これは矯正経験の有無にかかわらず起こる変化です。

そのため、癖が歯並びに影響していた方には、保定期間終了後も就寝時のみ装着を続けることをおすすめする場合があります。「一生つけ続けるのか」というご質問をいただきますが、装着時間を段階的に減らしながら、就寝時のみ継続していただくのが現実的な形です。

4. リテーナーの正しい着脱方法

正しい着脱の順序

破損の多くは、着脱の仕方が原因です。

外すときは奥歯から、つけるときは前歯から。 これが基本です。

前歯から外そうとすると前歯部分に力が集中し、破損につながります。装着するときは前歯から奥歯へ向かって、指で順に押し込んでいきます。

前歯がしっかりはまっていないと全体が浮き、違和感の原因になります。

なお、口に入れて噛み込んではめる方法は破損の原因になります。 必ず指で装着してください。

5. 装着中の飲食について

装着中に飲めるのは水だけ

リテーナーを装着したまま飲んでよいのは、基本的に水のみです。

コーヒー、お茶、ジュース、スポーツドリンクなどは、着色や虫歯のリスク、装置の変形につながるため、外してから飲むのが原則です。特に温かい飲み物は熱で装置が変形する可能性があります。

飲み物の種類ごとの注意点は、別記事で詳しく解説しています。

▶ 関連記事:リテーナー装着中の飲み物の注意点

食事の際は必ず外してください。装着したままの食事は破損と不衛生の原因になります。

6. つけ忘れた・1日サボってしまった場合

「1日だけ外してしまった」というご相談は非常に多くいただきます。

保定を開始して間もない時期ほど後戻りの力が強いため、1日でも歯が動く可能性があります。ただし1日程度であれば、翌日から通常どおり装着すれば戻る場合がほとんどです。

問題は、再装着したときに強い痛みや、はまらない感覚がある場合です。これは既に歯が動き始めているサインですので、無理に押し込まず歯科医院にご相談ください。無理な装着は装置の破損と歯への負担につながります。

▶ 関連記事:リテーナーを1日サボるとどうなるか

7. 発音・滑舌への影響

装着し始めの時期は、サ行・タ行を中心に発音しづらさを感じる方がいらっしゃいます。舌が装置に触れることで、舌の動きが普段と変わるためです。

多くの場合、数日から2週間程度で慣れていきます。個人差はありますが、装置が舌に当たる位置に舌が適応することで、自然と改善していきます。

慣れるまでの間は、意識してゆっくり話す、音読で練習するといった方法が助けになります。

ただし、2週間以上経っても改善しない場合や、特定の箇所が強く当たって痛む場合は、装置の形状が合っていない可能性があります。調整で改善することが多いため、ご相談ください。

仕事で人前で話す機会が多い方には、装着開始のタイミングをご相談いただくこともあります。

8. 違和感・気持ち悪さ・吐き気について

装着直後に「気持ち悪い」「えずいてしまう」と感じる方がいらっしゃいます。上顎を覆う面積が広い装置では、口蓋(上あご)に装置が触れることで嘔吐反射が起こりやすくなるためです。

対処として、次のような方法があります。

  • 装着したまま鼻でゆっくり呼吸し、口の中の感覚から意識をそらす
  • 装着時間を短くするところから始め、段階的に延ばす(自己判断で減らす前に必ずご相談ください)
  • 装置の後方の縁を調整し、口蓋に触れる面積を減らす

多くは1〜2週間で慣れていきます。ただし嘔吐反射が強く出る方は装置の形状変更で改善する場合がありますので、我慢せずお申し出ください。

【リスク・副作用】 装着開始時には、圧迫感、軽い痛み、発音のしづらさ、唾液量の変化などが生じることがあります。多くは一時的なものですが、症状が続く場合は装置の調整が必要です。

9. リテーナーのお手入れ方法

洗浄剤を使ったお手入れ

基本は毎日の歯ブラシによるブラッシングです。加えて、種類によって注意点が異なります。

9-1. マウスピース型・インビジブル型

毎日歯ブラシで磨き、週に1〜2回は専用の洗浄剤を使用します。

  1. コップに水またはぬるま湯を入れる(熱湯は変形の原因になるため避けてください
  2. 洗浄剤を入れ、次にリテーナーを入れる
  3. 規定時間つけ置きする
  4. 取り出して水でよくすすぐ

9-2. プレート型

手順はマウスピース型と同じですが、酸性の洗浄剤は避けてください。金属部分が錆びる原因になります。

9-3. ワイヤー型・固定式

毎日のブラッシングに加え、ワイヤー周辺は食べ残しや歯石がたまりやすい構造です。ブラッシングだけでは汚れを取り切れないため、歯科医院での定期的なクリーニングを受けてください。

9-4. 共通の注意点

  • 熱湯・食洗機・乾燥機の使用は変形につながるため避けてください
  • 外したときは必ず専用ケースに保管してください(ティッシュに包むと誤って捨てやすくなります)
  • 装置に強いにおいや白い付着物が出た場合は、洗浄剤での洗浄頻度を上げてください

10. 破損・紛失・作り直しについて

破損したときの費用と期間

10-1. 壊れる主な原因

保管方法の不備。 外したあとテーブルに置いて踏んでしまう、鞄やポケットに入れて変形させてしまうケースが最も多い原因です。

装置の劣化。 リテーナーの使用期間は長く、着脱の繰り返しや噛み合う部分の摩耗によって、穴が開いたり亀裂が入ったりします。穴が大きくなると使用できなくなります。

10-2. 作り直しの費用と期間

作り直しにかかる費用は、装置の種類と医院によって異なります。一般的な相場は5,000円〜50,000円程度です。マウスピースタイプは比較的安価で、フィックスタイプは高額になる傾向があります。

作り直しの期間は、一般的に2週間から1ヶ月程度です。この間はリテーナーを装着できないため、後戻りを防ぐ応急的な対応について歯科医院にご相談ください。

10-3. 他院で作った矯正の作り直しについて

他院で矯正治療を受けた方が、リテーナーの破損や紛失で当院にご相談されるケースがあります。対応可否は、元の装置の種類と現在の歯並びの状態によります。

▶ 関連記事:他院で作ったリテーナーの作り直しについて

11. 後戻りが起きてしまったとき

後戻りが起きたときの判断

すでに歯が動いてしまった場合、リテーナーだけで元に戻せるかどうかは、動いた量と経過した期間によって変わります。

わずかなずれで期間も短ければ、リテーナーの再装着や新しい装置の作製で対応できる場合があります。一方、大きく動いてしまった場合や年単位で経過している場合は、再矯正が必要になることがあります。

自己判断で市販の装置を使ったり、以前の装置を無理にはめたりすることは、歯や歯根に負担をかけるため避けてください。

▶ 関連記事:後戻りを防ぐ方法

12. リテーナーの費用について

リテーナーの費用は、矯正費用に最初から含まれる場合と、別途必要になる場合があります。別途の場合、上下で6万円前後が一般的な相場です。

矯正治療を始める前に、リテーナー費用が総額に含まれているか、破損時の作り直し費用はどうなるかを必ず確認してください。ここを確認せずに契約すると、想定外の負担が発生することがあります。

▶ 当院の料金体系(リテーナー費用・保証範囲を含む)は料金ページでご確認いただけます。

13. 当院の保定方針

当院では、矯正治療の一環として保定を位置づけています。装置を外して終わりではなく、保定が完了して初めて治療が終わると考えているためです。

保定装置にはマウスピースタイプを採用しています。治療中にマウスピースの着脱が習慣になっている方であれば、保定に移行しても新しい負担が増えないためです。装着時間は1日20時間以上をお願いしています。

保定期間中も定期的にご来院いただき、歯並びの状態と装置の適合を確認します。わずかな変化のうちに気づければ、装置の調整で対応できることがほとんどです。

装置が合わない、外れやすい、痛みが出るといったことがあれば、次回の来院を待たずにご連絡ください。我慢して装着をやめてしまうことが、後戻りの最も多い原因です。

※ 通院頻度、保証の範囲、費用に含まれる範囲については、カウンセリング時に詳しくご説明しています。

14. 治療期間とリスク・副作用について

保定に要する期間 矯正治療完了後、おおむね2年間の保定期間を要します。歯を動かすのに要した期間と同程度が目安です。期間は歯並びの状態や生活習慣により個人差があります。

起こりうるリスク・副作用

  • 装着開始時の圧迫感、痛み、発音のしづらさ、嘔吐反射
  • 装着時間が不足した場合の後戻り
  • 固定式装置における清掃困難による虫歯・歯周病のリスク
  • 装置の破損・変形・紛失、およびそれに伴う再作製の費用と期間
  • 保定期間終了後も、加齢による歯並びの変化は起こりうること

費用について リテーナーの作製・作り直しは自由診療(保険適用外)です。費用は料金ページをご確認ください。

よくある質問

Q. リテーナーは一生つけ続けなければいけませんか。 保定期間の2年程度を過ぎたあとは、装着時間を段階的に減らしていきます。ただし歯並びに影響する癖がある方には、就寝時のみの装着を継続していただく場合があります。加齢による歯並びの変化は誰にでも起こるため、就寝時の装着を長期的に続ける方も多くいらっしゃいます。

Q. 1日つけ忘れました。後戻りしますか。 保定開始直後ほど動きやすいため、1日でも動く可能性はあります。翌日から通常どおり装着すれば戻る場合がほとんどですが、再装着時に強い痛みやはまらない感覚がある場合は歯科医院にご相談ください。

Q. リテーナーをつけたまま飲み物を飲めますか。 水のみ可能です。コーヒー、お茶、ジュースなどは着色・虫歯・変形の原因になるため外してからお飲みください。

Q. 発音しづらいのですが治りますか。 多くは数日から2週間程度で慣れます。2週間以上改善しない場合や特定箇所が強く当たる場合は、調整で改善することがあります。

Q. 他院で矯正しましたが、リテーナーだけ作ってもらえますか。 装置の種類と現在の歯並びの状態によります。まずはご相談ください。

まとめ

リテーナーは、矯正治療の仕上げにあたる装置です。歯を動かす治療と同じくらい、その後の保定が結果を左右します。

  • 後戻りの力は治療後およそ1年間、強く働く
  • 保定期間の目安は2年程度。歯を動かした期間と同程度
  • 当院では1日20時間以上の装着を推奨
  • 着脱は「外すときは奥歯から、つけるときは前歯から」
  • 装着中に飲めるのは水のみ
  • 破損・紛失時は自己判断せず早めに相談を

保定でお困りのことがあれば、装置の調整や装着方法の見直しで解決できることが多くあります。我慢せずご相談ください。